視察レポート

Report

喫茶ランドリー 1階づくりはまちづくり

 先々月、東京都墨田区にある喫茶ランドリーにお邪魔した。喫茶ランドリーは、洗濯機、ミシン、アイロンが使える“家事室”のある喫茶店だ。20181月に誕生し、墨田区千歳の住宅街にありながら人気を集めている。店内は学生や一般の客で賑やかだった。

 この喫茶ランドリーの特徴はパブリックスペースの役割を担っていることだ。おしゃれな公民館とも言える。喫茶ランドリーでは、喫茶店のスペースを貸し出ししており、ママ友会をしたい時などに借りることができる。また、家事室にはミシンがあるため、小物やグッズを楽しむこともできるし、大きなテーブルもあるため、シーツをアイロンしたり畳むのに便利だ。喫茶店の家事室というより、まちの家事室という感じ。本来家事は一人で黙々とやる仕事だが、ここでは仲間と楽しく行うものになっている。

喫茶ランドリー店内の構成は、喫茶店スペースと事務所と家事室だが、時には写真展の展示会場、建築学科の学生の作品展示会場、コンサート会場、DJブースへと様変わりする。

 この喫茶店を開いたのは「マイパブリックとグランドレベル」の著者である田中元子さんだ。彼女が2016年に設立した(株)グランドレベルの事務所は喫茶ランドリー内にある。その本によると、日本は都市・まちづくりに「1階づくり」のルールがなく、マンションが立ち並ぶエリアは特にエントランス・ロビーだらけになってしまい、1階が閉ざされた空間になる。それが「死のまち」である。どんな建物・施設にも1階そのものにパブリックスペースを持たせることで人々が立ち寄ってコミュニティを作る。喫茶ランドリーはそれを叶えたのだ。

 ここまでは「成功事例を取り入れて上手くいったという事なのか」と思っていたが、それを反省させるように(株)グランドレベルの大西正紀さんから次のように言われた。「世の中幸せな人もいれば、悲しい人もいる。海外での成功事例は他事例を参考に出来たものではなく、様々な人の話しあいの中で出来たもののはず。どんな人がその地域に住んでいるのか、人と街の関連性をみて話をしていけたらいい」。確かに都市空間の中では、主人公はそこに住む人々だ。地域の人に合ったまちづくりを考えることが大事だと、基本的なこととして勉強になった。

 

喫茶ランドリー外見
喫茶ランドリー外見
もぐらせき。DJブースになるときも。
もぐらせき。DJブースになるときも。
東京理科大学の学生さん。今まで作品を作っても捨てられる場合が多かったので、ここで展示することに。集まって作品をどうするか話し合い中。
東京理科大学の学生さん。今まで作品を作っても捨てられる場合が多かったので、ここで展示することに。集まって作品をどうするか話し合い中。
スタッフの桑原さん。ママ友の方(スタッフ)に誘われて働くことに。メニューも料理上手な”元お客さん”が考えている。
スタッフの桑原さん。ママ友の方(スタッフ)に誘われて働くことに。メニューも料理上手な”元お客さん”が考えている。
株式会社グランドレベルの大西正紀さん(左)
株式会社グランドレベルの大西正紀さん(左)
(2019.8.23/神谷佐菜)

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