名古屋まちづくり情報

Information

堀川・新堀川めぐり

 

 コロナ禍による県外への移動自粛の機会に、身近なまちをじっくり見てみようと、3日間かけて名古屋市内の堀川と新堀川の沿川を歩いてみた。

 

 堀川は、名古屋開府に際し、徳川家康の命により福島正則が建築資材運搬用の運河として開削したことがルーツで、当初は熱田の湊から名古屋城の南西端(朝日橋付近)までであった。江戸時代後期に朝日橋以北が開削され、さらに明治期に犬山との舟運と農業用水の取水を目的に、この川の拡幅・延伸が行われたという歴史を持つ。名古屋の都心を流れる歴史ある運河である。

 新堀川は、明治後期に洪水の発生防止とともに、船舶の運行と下水処理水の受け皿とするため、曲がりくねった精進川を改修し、開削された運河である。都心から南へ流下し宮の渡しで堀川と合流している。

 昭和初期から高度成長期にかけての輸送手段の変化や都市化による水質汚濁の進行により人々の生活が川から離れ、堀川は「死せる川」と呼ばれるに至ったという。その後、環境に対する関心が高まる中で、堀川の環境改善・再生や様々なイベント開催などを行う多くの市民団体が生まれ、1990年代より堀川マイタウン・マイリバー整備事業が4地区(黒川地区、名城地区、納屋橋地区、白鳥地区)で実施された。現在は2010年に公表された「堀川圏域河川整備計画」に基づく整備が進められている。

 

 堀川では護岸の改修や親水広場の工事をしている箇所が何か所もある。すでに整備が終わり、市民の散策や憩いの空間として活用されてところも多く、まちが変わりつつあることが実感できる。一方で、まだ未整備ではあるが、長い歴史の中で成長した緑が堀川を覆っている箇所もあり、その景観は魅力的だ。歴史を感じる護岸や橋も多く、よい雰囲気を醸し出している。このようなみどりや歴史性は、護岸改修した後もぜひ継承してほしいと思うが、現状の改修状況をみていると、様相が一変してしまうのではないかと心配にもなる。

 一方、新堀川の沿川は散策路などとして利用されているところは一部に留まっており、殺風景な駐車場となっている箇所も多い。水質も堀川が「☆☆☆」や「☆☆」であるのに対し、「☆水のにごりがある」という評価で、水を楽しむという状況ではない。現状では整備予定もないようだが、沿川には未利用の市有地と思われるところが点在しており、水質浄化とあわせてこの空間をうまく活用すれば、歩いて楽しい空間に生まれ変わるのではないかと期待がもてる。

 堀川と新堀川が合流する宮の渡し以南は、川幅も広くなり、様相が変わってくる。船が多く係留されている箇所はいろいろな様相をみることができ、眺めていて飽きない。人気のカフェもこのあたりにある。

 

 気になる箇所をどんどん写真に撮っていたら、3日間で1500枚を超えてしまっていた。現状でも結構楽しめるルートなので、名古屋の魅力としてもっと打ち出せればとも思う。コロナ禍が身近なまちを見直すよい機会を与えてくれました。

 

 

中橋より。みどりが水面に映えて美しい。見た時の感動が写真では伝わらないのが残念。
中橋より。みどりが水面に映えて美しい。見た時の感動が写真では伝わらないのが残念。
岩井橋より。前の写真との対比。中橋あたりがこんなふうにはなってほしくない。
岩井橋より。前の写真との対比。中橋あたりがこんなふうにはなってほしくない。
市民グループによる新堀川の水質モニタリング。
市民グループによる新堀川の水質モニタリング。
新堀川沿いの未利用の市有地と思われる個所。このようなところが結構ある。
新堀川沿いの未利用の市有地と思われる個所。このようなところが結構ある。
千年あたり。
千年あたり。
(2021.6.18/石田富男)

ページTOPへ