住まいまちづくりコラム

Columun

“新常態”の日常

 

 名古屋都心の栄や名駅周辺を歩いていると、ビジネスホテルのいくつかは最近新しい空間ビジネスをアピールしているのが目についた。現状の新型コロナ禍により、出張や観光が極端に減るために、ビジネスホテル経営はアップアップの状態になっているので、何とか収入を増やすために始めている。確かに以前から昼間の利用されない客室を貸出することはあっても、割安に時間単位で貸し出しをたり、室内のベッドさえ取り払って「テレワーク、女子会、ママ会、お教室やレッスン(広告写真ではヨガが掲載)、etc」といった多様な利用を前提に貸し出すホテルが登場してきている。朝昼間貸出(8001800)、時間貸出(3時間)いずれも3,000円であった。

 大学では対面授業を行うとクラスターになりかねないので、リモート授業が推奨されている。wi-fi環境があれば、教員も学生もどこでも授業ができる。最近、平日の夕方にゼミ授業を開催した際に、いつもと雰囲気の異なる場所で受講している学生がいた。どこで何をしているのかと尋ねると京都に友達と旅行に来ているとのこと。平日ゆえにホテルは空いていて、観光施設も密でない状況を保てるので、リモ-ト授業ゆえに可能な行動であると本人がつぶやいていた。旅行の合間に授業?いや授業の合間に旅行?

 本日のテレビで星野源のソロデビュー10周年記念配信ライブがニュースになっていた。渋谷クワトロ(750席)での無観客配信である。視聴パスは3,500円(税込み)で約10万枚のチケットが販売されたようである。会場キャパシティの130倍となるので、売上も単純計算だと3.5億円となる。星野源だと横浜アリーナを満杯にできるであろうから、それを計算すると17,000席×10,000円=1.7億円。配信ライブは2倍の売上となった。他方、サザンオールスターズも横浜アリーナで無観客配信ライブを行っており、3,600円(税込)で18万枚が購入され、計算しやすいように単純計算すると6.48億万円。実際のライブを同じ場所で行ったとして、先の星野源と同じ1.7億円となるので、4倍の売上となる。ちなみに2019年にサザンは22公演65.9万人の動員を誇り、1公演あたり3万人の動員力を誇る。配信ライブは国内外どこにいても視聴できるが、現場的臨場感はどうしても薄れる。いずれは3Dゴーグルで立体音響を駆使し、観客の声も反映できるシステムは開発されるのではないか。イベント観客は収容人数50%以内で5,000人以下(8月以降は人数制限が撤廃予定)であることを考えるとライブ配信は一つの興行手段として定着するのではないだろうか。

 富士通は在宅勤務を標準とする働き方へ2022年度までに切り替え、通勤と言う概念をなくしてオフィスを半減すると発表した。グループでの従業員は8万人に達する。既存オフィスは社内外の交流の場(Hub Office)と高性能ビデオ会議室やミーティング拠点(Satellite Office)、新たに外部オフィスを都心や郊外の駅近接でシェアオフィスを契約するようである。オフィスの役割は作業の場でなく、コミュニケーションとクリエーションの場としての機能に変わっていくのであろう。

通勤形態が変わるなら住宅選択も変わるであろう。地価の高い通勤便利な狭いマンションより、地価の安い郊外(遠隔地)の庭付き戸建住宅を選考するようになるとの新聞記事があった。これが大勢力になるとは思わないが、そうなれば空き家問題は一定解消するかもしれない。しかし、これまで進めてきたコンパクトな市街地形成とは逆行する。

 いずれにせよ、新型コロナ禍の影響が一過性でなく、これからの暮らし方を変えていくのは間違いない。それにどう対応していくのかが個人としても、家族としても、企業としても、地域としても鋭く突き付けられている課題である。

 

ビジネスホテルの新客室ビジネス
ビジネスホテルの新客室ビジネス
(2020.7.14/井澤知旦)

ページTOPへ