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フィリピンパブ嬢の社会学/中島弘象

新潮新書/2017年2月20日発行

SPACIAの事務所近くの中区栄4丁に街区公園「池田公園」という公園があり、園内には樹木や噴水、遊具もあり、親しみやすい公園だが、周囲は飲食店等の看板が数多く掲げられる雑居ビルに囲まれ、独特な雰囲気の中に位置する。
この界隈は、名古屋の代表的歓楽街の一つで、外国人パブ、特にフィリピンパブが多く集積するエリアとされ、本書は、著者が学生時代に栄4丁目のフィリピンパブで働く女性の生活を研究テーマに掲げ、彼女達と生活を共にしながら、在日フィリピン人女性の社会的な立場、抱えている問題等から多文化共生の在り方を記したノンフィクションである。
2017年の出版後ベストセラーとなり、映画関係者の目に留まり、著者の出身地である愛知県春日井市で映画化に向けたプロジェクトが立ち上がった。
春日井市は、令和5年6月に市制80周年を迎える。本書の映画化は、その記念事業としても位置付けられ、今夏、著者が在席した大学や市内の商業施設、商店街等を舞台に撮影が行われ、来年秋冬の公開が予定されている。
知り合いの商店街関係者も撮影協力には積極的で、協賛金依頼に奔走し、スタッフの滞在先の手配等、ネットワークを活用し、裏方業に取り組んでいる。また、行政も地元のPR効果を期待し、一体となり盛り上げている。
 本書の中で記されている、日本とフィリピンの国民性、生活環境、労働条件の違いやSDGsで提唱されている多文化共生社会の実現の難しさが春日井市を舞台にどう描かれるか興味深い。
(2022.9.5/村井亮治)

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