図書紹介

Books

アフターコロナ時代の不動産の公式/幸田昌則

日本経済新聞出版/2021年1月25日発行

 昨年は、新型コロナウィルスの感染拡大から空白の一年となり、その影響は今なお続いている。このコロナ禍の中、各業界では将来への影響やその対応等、様々な議論がなされ発信されている。日々、再開発事業(不動産事業)に関わり、その影響を徐々に感じる中で、不動産市場の現状分析の一例となり得るのではと思い本書を手にした。
 本書は、コロナ禍以前のアベノミクスとインバウンド需要に沸いた三度目の不動産バブルとその崩壊。さらに、バブル崩壊直後に起こったコロナ禍による住宅・不動産市場の変化を地価推移や国の意識調査結果等を用いて解説している。
その上で、このアフターコロナ時代において活路を切り開く要素を何点かあげている。1つは超高齢化社会で、生活に便利な駅近住宅の購入、老舗店舗の閉店や資産処分及び空き家の賃貸、さらに福祉施設への入所等、高齢者が今後の不動産利活用の中心になり、流動化が促進されるとしている。また、不動産(建物)の高齢化(老朽化)が進み、つくるから壊す時代へと新たなニーズが生まれるともしている。
 また、別の要素としてデジタル化の拡大があり、消費者のネット通販拡大は店舗を不要にし、働き方改革の浸透はテレワークの活用につながり、通勤や社外訪問の時間が不要になり、企業も家賃の高い都心で拠点となるオフィスを構えなくなる。さらに、在宅勤務は働く場と住まいの距離をなくし、家賃や物価が安い地方や郊外へ住まいを求めることを可能にする。テレワークや在宅勤務は、当初程実施率が高くないといわれるが継続意向の企業、社員は少なくなく、デジタル化が店舗、オフィス、住宅市場へ与える影響は大きいとしている。
 日々業務にあたっている再開発事業は、不動産をつくる側で、不動産を所有や利用(賃貸借)する側があって成立するが、本書で記された今後の不動産市場への影響を考えると、今まで以上に厳しい条件になることが想像できる。
 コロナ感染状況は未だ収まる兆しが見えないが、ポストコロナ時代を見据え、事業予定地区のポテンシャルを最大限活用し利便性と快適性を備えた事業計画を構築し、地権者の不動産活用とまちづくりを支援していきたい。
(2021.4.23/村井亮治)

ページTOPへ