スペーシアレポート

パティオを囲むまちづくり

堀内 研自

 パティオとは本来スペインの住宅で見られる中庭のことであるが、近年、このパティオを活用したまちづくりが全国各地で注目を浴びるようになってきている。ここでは全国の事例と西春町での取組みを紹介する。


●Prego(プレーゴ)

金沢市の繁華街にある「プレーゴ」は金沢TMOが事業主体となり、商店街の活性化のため商業開発を行なった全国でも先駆的な施設である。郊外のショッピングセンターとの差別化を図るため、パティオや路地を重厚感のある欧風の町並みで囲んでいる。おしゃれで高級感のある広場は、自動車の展示会やブライダルショーにも活用され、周辺の商業施設にはない利用価値を生み出している。


シンボルであるパティオ広場は、フィレンツェのタイル職人により装飾が行なわれた。この施設の人気は上々で、周囲のテナント賃料も上がり始めているという。
住所:金沢市片町1丁目3-2


●SunStreet(サンストリート)

東京・亀戸にある「サンストリート」は店舗に囲まれた約300坪のパティオ広場を造ることで、大きな集客力に結びついた商業施設である。このパティオでは年間50を越すイベントが行なわれ、いつ来ても楽しい発見の有る場所として定着している。また、パティオ広場は、展示販売等のために企業に貸し出すことで、年間で4,000万円近くの収入を生み出している。


まちとの一体感を演出するため、施設には9ヶ所ものゲートが設けられ、広場や路地と繋がることで回遊性を創出している。   
住所:東京都江東区亀戸6-31-1


●プラース事業

 東京の一等地にある低未利用地に、10年〜20年の事業期間で暫定利用型商業開発を次々に完成させているのが「プラース事業」である。特徴は低層の建物を広場や路地を形成させながら配置している点で、密集した都心部に青空、風、緑を感じられる憩いの場を提供している。

●南青山プラース

●代官山プラース
広場はブティックや美容院に囲まれ、コンテンポラリーな空間を演出している。この日は学生風の女性が写真撮影を行なっていた。プラース事業はすでに第三弾が南青山に完成している。


●サン・パティオ大町

 秋田市大町は他の商店街と同様に衰退が進んでいた地区である。そんな中、地元商業者を中心に国の高度化事業で全国でも2番目となる、「商店街パティオ事業」を活用した「サン・パティオ大町」の建設に立ち上がった。完成から5年たったが、緑の多いパティオは年を経るごと魅力的になってきている。サン・パティオの成功をうけ、隣接する街区でも古い蔵を利用した「フォーススクエアー」の整備につながり、着実に周囲を取りこんだまちづくりに発展している。


施設中央には約180坪のパティオ広場が設けられ、大型店にはない緑豊かで高級感のある空間が形成されている。周辺でもおしゃれなお店が増えてきている。
住所:秋田市大町1丁目106-113

●西春町のパティオ事業

 現在、愛知県の西春町で進められているパティオ形式の建築は、平成15年度末の着工をめざし設計が進行中である。ここでは3人の権利者が土地を出し合い、一般に開放されたパティオと路地を生み出している。このような土地利用は、よほどまちづくりへの理解がなければ不可能である。
全国の事例を見ても分かるように、パティオから創出されるまちづくりの可能性は大きい。パティオを造ることで、まちの回遊性を高め、まちに安らぎの空間を与え、まちにフレキシブルな活用の場を提供し、統一感のあるまちなみを創出する。こうした可能性にかけ、地域の活性化を獲得した前例を見習い、是非とも西春町の駅前商店街を魅力あるものにしたい。

3人の権利者による優良再開発事業でH16年秋頃完成予定。3棟の建物がパティオを囲み、2階レベルではデッキにより各棟が結ばれる。カメラ店、旅行会社、デザイナーズ賃貸等が入る予定。  
住所:愛知県西春町九之坪

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