特集 まちを使いこなす

まちの財産!大学を活かした中心市街地の再生
〜西春町の取り組み〜

加藤 達志

 「中心市街地の活性化」 まちづくりに関わっている人なら、聞き飽きるくらい耳にした言葉であろう。平成10年に中心市街地活性化法が施行されて以来、既に全国532市区町村(549地区)で基本計画が策定された(平成14年12月1日現在)。ここで取り上げる愛知県西春町においても、平成13年度に基本計画を策定したところである。

 「まちの資源を生かし、西春らしさをいかに出すか」。これが計画策定当初からの目標であった。既に名鉄西春駅の西側では土地区画整理事業が動き始め、これが完了すれば駅前の景観は一変する。しかしハード事業は重要であるが、それだけではまちの魅力を創出することはできない。そこで当計画のソフト事業の柱として議論し続けてきたものが「地元大学と地域の連携・交流」である。つまり、西春の知的資源・人的資源の財産である名古屋芸術大学(以下、名芸大)を、中心市街地を活性化させるためにいかに活用していくかということである。町内には、名芸大の美術学部及びデザイン学部の校舎がある。西春駅から歩くには程遠く、駅で学生を見かけることは少ない。見かけても自転車で通過する程度である。そんな現状を打破するため、芸術系大学という特性を生かしながら、若者でにぎわう駅前通りにすることを目指し、基本方針のひとつに「暮らしに芸術がとけこんだまちづくり」を掲げた。そして今年度から、実現に向けて動き出した。

 まずは大学、地元商店街、町による話し合いの場をもち、それぞれの意向を出し合った。議論の末、駅前にある空き店舗を学生の制作・活動の場、地域との交流の場として、町が賃料を支援する形で名芸大が借りることとなり、学生による試行錯誤の活動がスタートした。こけら落としは、7月26日、27日に行われた地元の一大イベント、駅前七夕祭り。歩行者専用になる駅前通りは人また人。そんな中、空店舗を活用した大学生による演劇が始まった。演劇といっても本格的なものではない(おっと失礼)。プチ芝居というべきか、短編6作品で、ユーモアあふれるものであった。初日は観客集めにも一苦労。学生が声をかけてもなかなか振り向いてくれなかったが、若さとチームワークの良さで何とか会場はいっぱいに。また前夜祭でPRした甲斐あって、地元商店街の方も積極的に足を運んでくれた。まずは大成功といえるスタートであった。しかし、今後のスペースの活用法については、全く決まっていなかった。

 町民がこのスペースに親しみをもち、気軽に出入りできるようにするには、一朝一夕ではなかなか難しい。せめて定期的にイベントなどを開催し、商店街の方、町民の方とのふれあいの場を設けることが大切と考え、交流の土台を築いていくことにした。そこで第2弾として、夏休みも終わろうとする8月末、町内の小学生を対象とした「夏休みこども工作教室」を実施した。プラスチックジュエリーづくり、石こうによるネームプレートづくり、ウィンドベル(風鈴)づくりの3コースから自分のやりたいものを選び、総勢100名近くが参加した。先生役の大学生も参加者の多さにビックリ。子ども好きの学生もそうでない学生も、一生懸命作り方を教えていた。これも好評のうちに幕を閉じることができた。その後は、1ヶ月に1度のペースでイベントを行うとともに、今では1坪ショップとして学生や卒業生の作品を展示・販売しながら、町民とのふれあいの場として利用している。

 中心市街地の活性化は、全国の多くのまちでの課題であり、その解決策の近道は、そのまち独自の資源を発見し、いかに活用するかであると思う。西春町では、まちの大きな財産である大学が、まちの顔である駅前の商店街の空き店舗を活用し、芸術・交流活動に頑張っている。今後も大学生の若いパワーが西春のまちなかを活気づけてくれることを願ってやまない。

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