特集 名古屋の都心考

名古屋都心の新たな拠点形成に向けて
大須の歴史と今後

村井亮治

 知らない者はいないくらい賑やかな商店街。昔ながらのお団子からパソコン、カジュアル衣料・雑貨、古着等、様々な業種の店舗が混在している。
 その大須商店街で、昨年24回目となる「大道町人祭り」が開催された。この祭りは、官主体の「名古屋まつり」に対抗して商店主達が企画し市民の手づくりの祭りとしてスタートした。今では名古屋まつりとともに名古屋の秋を彩る祭りとして定着し、多くの人が大須を訪れている。

大須の衰退そして発展

 その昔大須は、名古屋城と宮の中間という立地から発展し、明治時代には名古屋初の公立病院や万松寺境内には名古屋市役所の前身も設けられ、まさに名古屋の中心的なエリアであった。
 戦後の復興が進むにつれ、大須から様々な機能が分散し、また名古屋駅地区や栄地区への商業の集積が進み、中心的存在が薄れ苦しい時代となったが、庶民唯一の娯楽「映画」の街として賑わい続けた。しかし、経済成長によるテレビ時代の到来により映画館も衰退し商店街として壊滅的な状態となった。そんな中、危機感を抱いた地元商店主達がたちあがり、大道町人祭りを初め様々なイベントを企画・開催し、再び大須へ人々を呼び戻すことに成功した。さらに、家電や電子機器、パソコンといった新しい業種の集積もあり一気に活気付いた。そして現在、大須は名古屋の中で最も活気と賑わいのある商店街として君臨している。その源には地元商店主達の大須への愛着がある事を忘れてはならない。

大須への想いと新たな拠点づくり

 そんな大須に今新たな魅力ある商いと居住の場が生まれようとしている。この紙面でも紹介してきた市街地再開発事業が今年度、最終段階へと入りつつある。順調にいけば2年後のお正月は、真新しい再開発ビルで祝う事ができる。この事業もまさに大須の街ならではの、地元住民の手づくりによる事業である。今の経済情勢ではこの先どうなるのか不安がある。しかし、今のままでは大須はダメになる。自分達が築き上げてきた大須を自分達の代でダメにしてはいけない。そんな強い想いが多くの人を動かし、昔ながらの職住一体となった新しい拠点施設が整備されようとしている。大須は今後も名古屋駅地区や栄地区にはない魅力と機能が融合する街として、名古屋都心の重要な一画を形成し続けていくことだろう。

大道町人祭り「おいらん道中」

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