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スペーシア・メールマガジン(隔週発行予定)   □[第396号]2015/9/16□    □配信数 733□


スペーシア・メールマガジンの第396号をお送りします。
名古屋からの情報発信とともにまちづくりのネットワーク形成をめざしています。
今回、はじめて送信させていただいた方もよろしくお願いいたします。

<内容・目次>
 ◆まちのトピック◆
 ・長久手未来まちづくりビジョンシンポジウム
 ◆図書紹介◆
 ・みえない道路 建築基準法 二項道路/土岐悦康著
 ・地域再生の戦略 −『交通まちづくり』というアプローチ/宇都宮浄人著
 ◆読者の声◆
 ◆スペーシアのこの頃◆

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◆まちのトピック◆−スペーシアに関わりのある出来事や皆さんからの情報を紹介−
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○長久手未来まちづくりビジョンシンポジウム○

長久手市では、2050年を見据えた「長久手未来まちづくりビジョン」が策定され、
その発表の場となるシンポジウムが行われます。

日時:平成27年10月2日(金)19:00〜21:00(開場18:30)
場所:長久手市文化の家 風のホール(長久手市野田農201番地)
定員:300名
   申込不要、入場無料、手話通訳あり(定員になり次第、入場制限あり)

■ プログラム
■未来まちづくりビジョンの説明
■基調講演「まちの宝をみつけよう!」
  高井 一 氏 東海テレビ放送株式会社アナウンサー
■パネルディスカッション
 パネリスト:蝸F子 氏 社会福祉法人日本介助犬協会 事務局長
       久保田健一 氏 ユニー株式会社開発本部企画部 シニアマネジャー
       谷沢 明 氏 愛知淑徳大学 交流文化学部長
       吉田一平   長久手市長
 コーディネーター:井澤知旦 氏 名古屋学院大学現代社会学部 教授

〜スペーシア・浅野健 〜

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◆図書紹介◆ −まちづくりに参考になるものを紹介−
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○みえない道路 建築基準法 二項道路/土岐悦康著○
 創英社/2015年5月12日発行

 最近、とある土地に接道する道路について、二項道路、いわゆるみなし道路かどうかの
話題が出たため、二項道路に関する資料の一つとして本書を手にした。
 改めて「二項道路」は、「この章の規定が適用されるに至った際現に建築物が立ち並んで
いる幅員4.0m未満1.8m以上の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定に
かかわらず、同項の道路とみなし、その中心線から水平距離2.0mの線をその道路の
境界線とみなす。(本書より)」で、本書のタイトルにもある”みえない道路”である。
 この二項道路の認定を受けると道路の中心線から2.0m壁面後退が必要となり、
敷地(私権)の一部が割愛されるため、認定適否について問題が生じ、係争事案も
少なくはない。逆に、1.8m未満であればみなし道路でもないから、この規定には該当せず
壁面後退も不要となる。
 本書では、過去の住宅・土地調査の結果から4.0m未満道路接道世帯状況や人口密度との
関係性を示し改善動向を示す一方で、判例からみた二項道路問題(認定、取扱問題)が
提示されている。
一 一括指定の処分性問題 法施行当時、包括的に一括して一定の要件を満たした
  道路を二項道路とする定めにより生じてきた弊害
二 交通要件問題 一般交通に供していない場合の「通路」か「道(道路)」かの判断 
三 建築物連坦要件問題 建物が立ち並んでいるは沿道建物が二戸かそれ以上の連坦が
  必要か
四 中心線判定問題 特定行政庁が指定する二項道路認定の境界幅員1.8m(中心線)の
  捉え方によりその公平性が保たれているか
五 基準時問題 認定基準時(都市計画区域が定められた時点)で包括的に二項道路が
  認定されているが、その時点が異なることで生じてきた弊害
 二項道路問題は、権利者や地域住民、行政の問題でもあり、当事者間が協力し関わらないと
解消のみちはひらかれない。その方策には、狭隘道路拡幅整備事業、面的整備となる
市街地再開発事業のほか、密集市街地整備や防災まちづくりも関係し、都市計画的な
手法、政策により進められているが、どれも時間のかかる話であり、地道な対応にならざるを
得ない。
 狭隘道路に連なる長屋がつくりだすほどよい距離感のある生活空間は情緒ある風景だが、
高齢社会、人口減少による空家問題が深刻化することは建物更新がされず、二項道路問題も
そのままになる。
 今回発端となった土地もいきつくところは二項道路か否かの認定がカギで、幅員1.8mが
境となるが立会測量がなくとも公図か現地測量で、という曖昧さ。これまであまり意識して
こなかった二項道路だが、私権とまちづくりの狭間で改めて難しい問題であると感じた。
(村井亮治)

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○地域再生の戦略 −『交通まちづくり』というアプローチ/宇都宮浄人著○
 筑摩書房/2015年6月10日発行

 「交通まちづくり」という言葉は、まちづくり関係者にはすでによく知られていると思う。
この本では、その考え方を紹介し、衰退する地方での交通の見直しをきっかけにした
まちづくりの展開を提案している。2013年2月、我が国初の交通政策の理念と方向性を
示した「交通政策基本法」が施行され、その中で、交通とまちづくりは一体で進められる
ものという考え方が示された。富山市で展開されているような団子(まち)と串(公共交通
ネットワーク)によるコンパクトシティ戦略を交通政策面からも進めることが求められる
ようなり、交通まちづくりの実践がこれから大きなテーマになっていく。
 しかし、両輪の片方である公共交通ネットワークが現実には地方を中心に交通事業者の
撤退が相次ぎ、がたがたの状態にある。本書では、そんな中でも住民が協力した交通
まちづくりの芽生えとして、富山市、宇都宮市のLRT、新潟市のBRT、四日市市の
あすなろうなどの国内事例を紹介するとともに、ドイツ、フランスなどの海外の成功事由
などを紹介している。
 それとともに、本書で私が注目した内容は、交通まちづくりの効果について、「ソーシャル・
キャピタル」を挙げている点である。ソーシャル・キャピタルとは「心の外部性を伴った
信頼・規範・ネットワーク」と定義されているが、簡単に言うと「絆」や社会参加、交流など
人と人とのつながりである。交通の質が上がることでソーシャル・キャピタルが高まるという
数値的なデータが明確にあるわけではないが、紹介されている富山市でのアンケート結果を
みると、LRTができたことで、「人と会う回数が増えた」という効果が出ており、利便性の
高い公共交通が沿線住民のライフスタイルを変え、ソーシャル・キャピタルの醸成に影響を
与えたというのである。公共交通の評価というと、経済性や効率性など数字の議論に
なりがちだが、このような目に見えにくい効果もきちんと検討すべきだという著者の主張には
大いに共感できる。
 今後、交通まちづくりを進めていく上での重要な使命のひとつとして考えられるのは、
本書で取り上げられているソーシャル・キャピタルの醸成、つまり人々にどのような
ライフスタイルを提案し、人と人のどのようなつながりをコーディネートするか、なのでは
ないだろうか。
(櫻井高志)

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◆読者の声◆ −みなさんからいただいた感想や意見を紹介−
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(みなさんからのご意見・ご感想をお待ちします)

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◆スペーシアのこの頃◆ −所内の話題をちょっと紹介−
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・スペーシアでは毎年夏のこの時期と年末と年に2度大掃除を行います。先日行った
 大掃除では、確実に10年はも誰も見たことがないであろう文献資料が幾つもあり、
 思い切って大量に廃品回収に出しました。それでもまだ捨てられず、次回以降に
 整理を持ち越しした文献もあります。

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(株)都市研究所スペーシア 編集:浅野 健
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