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 ◆  ■   ■  ■  ■  ■ ■  ■  □[第182号]2007/6/25
◆   ■  ■  ■■  ◆ ■ ■  ■■ □−−配信数 702−−□

  スペーシア・メールマガジンの第182号をお送りします。
  名古屋からの情報発信とともにまちづくりのネットワーク形成をめざしています。
今回、はじめて送信させていただいた方もよろしくお願いいたします。
 
<内容・目次>
  ◆視察レポート◆
   ・石見銀山をたずねて 〜2007年社員旅行 in 山陰〜
  ◆図書紹介◆
   ・「地域遺産」みんなと奮戦記 -プライド・オブ・ジャパンを求めて- 
  ◆読者の声◆  
  ◆スペーシアのこの頃◆

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  ◆視察レポート◆  −まちづくりに参考になるものを紹介−
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○ 石見銀山をたずねて 〜2007年社員旅行 in 山陰〜 ○

  今年の社員旅行は、世界遺産登録をめざしている石見銀山をはじめ、温泉津、松江など
山陰に出かけた。名古屋からは中部国際空港から出雲空港への直行便がないため、島根県
の東隣にある米子空港(鳥取県)からのアクセスとなった。東の米子空港から西の温泉津
までの移動時間だけで3時間、名古屋からだと半日がかりと、とにかく移動が大変であっ
たが、梅雨時ながら天候には恵まれ、有意義な旅行となった。

●石見銀山
  石見銀山は、1526年に博多の豪商神谷寿禎によって発見され、1923年の休山まで約400
年にわたり採掘されてきた遺跡である。17世紀前半の最盛期には、日本の銀生産量は世界
の銀生産量の3分の1を占め、日本の生産のかなりを石見銀山が占めていたようである。盛
時は20万人もの人たちが住んでいたともいわれている。
  石見銀山のうち、見学のメインとなるのは直轄領の中心地であった大森銀山伝建地区
(1987年指定、32.8ha)から龍源寺間歩(まぶ)までの約3.1kmの区間である。当日は、石
見銀山ガイドの会の方の案内で、主に龍源寺間歩から銀山公園までの約2.3kmを巡り、残
りの大森地区は各自で見学した。
間歩とは、銀の採掘のために掘られた坑道のことで、石見銀山には間歩が600以上あると
いわれているが、現在公開されているのは龍源寺間歩のみである。銀山川沿いに、所々に
間歩が点在しているほか、木々の中に埋もれてしまってガイドさんの説明なしには気づか
ないような石垣も各所に見られた。
大森地区は、代官所跡にある資料館、大森町を代表する商家の熊谷家住宅(国指定重要文
化財)、武家屋敷旧河島家など、江戸時代から戦前までの石州瓦の建物が残る。また、飲
食、雑貨などの観光客向けの店も建ち並んでいる。また、小学校や町並み交流センターも
あるなど、コミュニティが存在していることも魅力的である。
  案内していただいたガイドさんによれば、石見銀山の価値を知るには、さらに数時間か
けて未舗装の林道に足を入れなければならないとのことであった。この林道に足を踏み入
れると、銀山開発当初の石銀集落や大久保間歩、釜屋間歩などの間歩群があり、戦国武将
の争奪戦の様子を知る山吹城跡などの城跡がある。大森地区の建物の修復・改修や龍源寺
間歩におけるバリアフリー化など最低限の手を加えるが、石銀集落は復元せずにそのまま
埋め戻し、間歩群は現在のまま手を加えないのが石見銀山保存の理念である。

●温泉津(ゆのつ)
  1300年以上前にタヌキが見つけたとされる元湯と、1872年の浜田大地震で湧き出した薬
師湯(震湯)と二つの源泉がある小さな温泉街である。毛利が支配していた時は銀の積出
港として栄え、江戸時代は生活物資の供給基地として銀山の暮らしを支えた。
  2004年に日本初、温泉街で伝建地区に指定された(面積33.7ha)。江戸時代以来の町割
を残し、町屋、廻船問屋、温泉旅館、社寺等の建物が残っている。石州瓦や所々になまこ
壁の建物もある。町並み保存事業第1号で修理されたカフェ&バー「路庵」をはじめ、年
2,3件のペースで建物の改修が行われているという。宿泊した旅館や外湯で言葉を交わし
た地元の人々は、とても人当たりがよい。食は、日本海の海の幸が豊富で申し分ない。
  一見、寂れた温泉街(地元の方々には失礼かもしれないが)であるが、隠れ家的な地域
として十分お勧めできる。

●松江
  松江では、船による堀川めぐりを体験した。松江の中心部を囲む宍道湖が汽水湖である
ため、水位が安定しており、堀川の水面も穏やかであった。船頭さんの話を楽しみながら
ゆっくりした時間を過ごすことができ、観光客を意識して季節の花やぬいぐるみで飾って
いる川沿いの民家の様子も楽しめた。

●全体を通して
  山陰地方はJRでも1時間に2本程度しかなく、東北や九州と比べても公共交通の面でハ
ンディを背負っている感が否めない。しかし、石見銀山のガイドさんや温泉津、松江で出
会った地元の人々のもてなしがあり、石見銀山・大森地区や松江市内では、バス交通・レ
ンタサイクル・堀川船めぐりなどの歩行者支援も整っており、まちの魅力をいっそう引き
出している。
  石見銀山の2007年7月の世界遺産登録については、ユネスコから延期勧告を受けたが、
市民・自治会・交通事業者・行政が力を結集して町並み保存、ガイドボランティア、パー
ク&バスライドによる交通規制に取り組んでおり、その動向を今後も注目していきたい。
(浅野 健)

  →ホームページに写真を掲載しています。
   http://www.spacia.co.jp/Mati/sisatu/iwamiginzan/index.htm

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  ◆図書紹介◆  −まちづくりに参考になるものを紹介−
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○「地域遺産」みんなと奮戦記-プライド・オブ・ジャパンを求めて-/米山淳一著 ○ 
    学芸出版/2007.5.30発行

  学生の頃の調査が縁でナショナルトラストの会員になっており、1989年には白川村合掌
造り民家の屋根葺きボランティアにも参加したことがあった。会報が送付されてきてお
り、ナショナルトラストのことはある程度知っていたつもりであったが、会報の記事の背
景にこんなにいろいろなドラマがあったとは・・・。著者の米山氏については屋根葺きの
際に印象的な人物として記憶に残っている。たんに一度やってみたいという単純な思いだ
けで参加したのだが、あの屋根葺きもナショナルトラストが今日大きな役割を果たすよう
になる過程の中で大きな意味があったことを改めて知ることができた。

  この著書を読むと米山氏の奮闘と多くの人々とのつながりの中で貴重な歴史資源が残さ
れたことがわかる。「辛苦舐めた大平宿の市民運動との連携」「涙を呑んだ馬場屋敷」な
どその道は平坦ではなった。しかし、歴史を活かしたまちづくりが、今では当たり前に語
られるようになったのも全国各地でのこのような取り組みがあったからこそだろう。さら
にその範囲は、歴史的町並みから、鉄道文化財、鳴き砂、茅葺き(農村景観)まで拡がっ
ている。まさに、地域の遺産を地域の誇り「プライド・オブ・プレイス」として地域の
人々が大切にしていこうという大きな流れが生まれてきているといえる。

  とはいえ、まだまだ地域の貴重な遺産が評価されずに失われ、混乱した景観を生み出し
ているケースも多い。米山氏のように地域の人々と一緒に汗をかきながら楽しく、地域遺
産を守り、まちづくりに生かす活動に少しでもかかわっていきたいと思う。
(石田 富男)

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  ◆読者の声◆ −みなさんからいただいた感想や意見を紹介−
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  (みなさんからのご意見・ご感想をお待ちします) 

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  ◆スペーシアのこの頃◆ −所内の話題をちょっと紹介−
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・今回の社員旅行では出雲大社や境港も訪れました。境港の水木しげるロードは
  午後5時をすぎていたのに結構人が歩いていたのに驚きました。23体からはじまった
  ブロンズ像が今では120体も。思い切ってこだわれば結構やれるという見本でしょう
  か。 「妖怪の町」(実業之日本社、2006.4発行)はまちづくり本としても興味深い
  内容です。(ishida)

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  を活用し、様々な意見交換等を行うことによって、より深いネットワークが形成
  できればと考えています。 様々なご意見や情報もお寄せ下さい。このメールマガ
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