住まいまちづくりコラム

Columun

書店とSNS

 

 全国で書店はどんどん減少を続け、2000年の21,495店から2020年の11,024店へと20年間で半減している。売場面積は2021年の143万坪から2020年の122万坪へ減少するも1店舗当たりの売場面積は119/店と最大になっており、書店が大型店化してきている(アルメディア調べ)。

 書店に行けば、目的とする本を取得するか、なくても他の書籍も視界に入り、ついその本を手に取ってしまう。それは関連本とは限らない。ネット通販との競合もあり、書店で売上げを伸ばすには工夫がいる。通勤に地下街セントラルパークを通るのだが、その途中に「くまざわ書店」がある。この書店はショッピングセンター等のなかへ中小規模で出店することが多いのだが、ここは比較的売場面積の大きい書店だ。ほぼ毎日店先を通るのだが、いろいろ工夫して展示している。新刊は店頭に並べ、平積み→棚(背表紙見せ)→棚(表紙見せ)→新刊コーナーから別のコーナー→平積み→棚(背表紙見せ)と1週間単位?で移動する。なかには分厚い、専門家しか読まないような書籍も並び、何となく“教養感”溢れる店舗を演出している。「テンプル騎士団全史」5,390円、「ボリショイ秘史」7,260円も上記のコースをたどって並べられる。ちなみにボリショイと言えばサーカスが馴染みだが、この書籍はバレエを扱っている。大型店にないこのような頻繁な展示配慮が気に入っている。

 ネットで本を検索すると、その本に関連する本を並べて紹介している。それは類似商品の紹介であり、リアルな書店であるような全く異質な本との出会いがない。それゆえ、ネット通販は個人的に利用しない。

 商品やニュースの検索を行うとクッキーが保存されるので、関連広告や関連ニュースで溢れかえる。グーグルで韓流ドラマを検索すると、グーグルニュースも韓流ドラマ情報だらけになっていく。YouTubeも同様である。最近、消費行動を追跡・分析するトラッキングも問題になり、iPhoneは許可する仕組みを取り入れている。そのような偏った情報ばかりを見ていると世の中すべてがその意見であるかのような錯覚を引き起こす。新型コロナに関するフェイクニュースも然りである。以前、お湯を飲めばコロナは死ぬというチェーンメールが流れたが、これも一方的情報ばかりを入手すると“真実”かのように錯覚させる。

 SNSの時代だからこそ、偏向した情報の洪水に巻き込まれないよう、客観視できる手法を持たないといけない。「ウソ」を見抜く力である。もちろんネットでも客観視は可能であろう。その点で私は書店に行くことにしている。並べられている本の中には「なんちゃって本」もある(アストラダムスの預言はエンターテーメントだ)。フェイク情報はネットでは気軽に流せるが、それを本にして書店に並べるとなると相当な努力がいるので相対的に少ない。要はフェイクを見抜く力を養う必要があるのだが、空間的にも情報的にも書店はリテラシーを培ういい場所であると思っている。

 

(2021.8.16/井澤知旦)

ページTOPへ