住まいまちづくりコラム

Columun

次世代モビリティ社会について

 自動車産業、交通分野においては100年に一度の大変革期、インダストリー4.0とも言われる大胆な技術革新によって新たな未来が切り開かれつつある。代表的なキーワードが「MaaS」や「CASE」である。
 MaaS(マース)とは、Mobility as a Serviceの頭文字をとったもので、移動のサービス化を意味する。これまでは車=モノを所有しての移動が主だったが、これからはICTを活用して、鉄道、バス、タクシー、ライドシェア、カーシェア、サイクルシェアなどの多様な移動手段の中から目的地までの最適な(シームレスな)組み合わせをサービスとして提供し、それを利用して移動するというものである。フィンランドではすでにその組み合わせを提供するアプリが開発され、サービスが実用化されている。日本でも様々な事業者がMaaS実現を狙っている。
 次にCASE(ケース)であるが、これはConnected(つながる、通信)、Autonomous(自動運転)、Shared(シェア)、Electric(電動)という最先端技術の頭文字をとった言葉である。自動運転が世界各地で実証運転され、注目が集まっているが、ほかのC、S、Eを一体とすることで、モビリティ社会はさらに大きく変わる。例えば、車は当然所有せず、移動したいときに無人の自動運転車が迎えに来てくれ、通信で渋滞も事故もなく、信号も不要なまちが可能になる。移動中も運転しなくていいので、例えば寝ることや仕事もできてしまう。効率的な車利用が可能になれば、まちから道路空間や駐車場を減らすこともできる。いろいろな未来が描けるのだ。
 この6月に「官民・ITS構想ロードマップ2018」が公表された。そこでは、2020年までに限定地域での無人自動運転(レベル4)の実現、物流トラックの高速道路での無人隊列運転の実現が掲げられている。もう目と鼻の先に自動運転社会が待っている。その先にはさらなる新しいモビリティ社会が待っている。そのときにまちがどう変わるのか、興味があるが、それについてはまだまだ様々な議論が飛び交い、定まっていない。ただモビリティ側からの議論が多いように感じる。一方でまち側の視点からも、これらのモビリティ技術を使ってどのようなまちをつくっていくのが望ましいのか、目指す未来を提言していくことが求められているのではないだろうか。

(2018.7.6/櫻井高志)

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