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女子大生からみた「好きな場所」と「嫌いな場所」
 現在、某女子大学で週一コマの講義(3年生を中心)を行っている。聴講型の授業では受け身になりがちなので、自らカメラを持って街に出て、「好きな場所」と「嫌いな場所」を撮影、発表、最後にレポートとしてまとめる講義を取り入れている。
 そのレポートを見ていると端的な傾向が読みとれる。

 「好きな場所」は「緑」「花」であり、それも管理された「緑」「花」であることだ。具体的には樹木の多い公園、連続した生け垣のある住宅地、街路樹が連続する道路や河川、花畑などがそれである。風景として森林や里山の緑はこの範疇に入ってこない。なかでも栄にある「オアシス21」の公園部分の評判が良く、芝生があって、陰のない(鬱蒼と繁茂していない)樹木という緑への評価である。

 他方、「嫌いな場所」は「混乱」と「不安」を抱かせる場所である。代表的なシーンは名古屋都心の歩道に乱雑かつ大量に置かれた放置自転車群や近郊都市の駅前にある大規模駐輪場の溢れる自転車群、飲食店街の違法駐車や過剰な看板類が前者で、人通りの少ない陰鬱な通りや雑草の生えた空き地、ゴミが溜まった人々の無関心な空間などが後者である。精神的にも肉体的にも安心感のない場所は敬遠されている。

 都市において安心安全な空間をつくりだしていくことは増々重要となる。例えば、女性が今以上に社会進出していくことは疑いない。ストレスが溜まって酒で憂さを晴らす機会も増えるであろう。が、飲食街は男性的空間であり、女性一人で飲みに行くには不安感一杯である。とはいうものの、安心安全を追究していくと、五十嵐太郎が書いた「過防備都市」の世界、あるいは映画「アイランド」の世界となり、徹底した監視下(街頭の監視カメラやNシステムなど)で生活を送らざるを得なくなる。
 「不安」と「安心」、「混乱」と「秩序」は緊張感のあるバランス問題であり、気を抜くとどちらか一方に偏向してしまう。双方があってこそ、片方を批評できる。
 安心安全のための社会システム(衆人環視を含めて)はある程度必要かも知れないが、危険を危険と感じる本能、混乱から脱出できる本能を高める、いわば野生性を研いでいかなければならないのではないか?
 でも、それってどんな都市(空間)?課題は山積である。
(2005.8.22/井澤知旦)