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観光ボランティアガイドを対象とした登録有形文化財・見学講習
 昨年6月に発足した愛知県国登録文化財建造物所有者の会(略称:愛知登文会)では登録有形文化財の保存と活用に係る活動として各種活動を行っているが、その1つとして観光ボランティアガイドの方を対象として、登録有形文化財の魅力を知ってもらうための見学講習を行っている。所有者や建築についての専門家の話を聞きながら建造物をみてもらうことによって、その魅力を肌で感じてもらい、まち案内の際に多くの市民の方に
伝えてもらおうという取り組みである。
  今年度は県内4カ所(碧南市:九重味淋、豊橋市:安久美神戸神明社、犬山市:井上家住宅・伊藤家住宅、名古屋市:名古屋陶磁器会館)において、地元の観光ボランティアガイドの方に呼びかけ、建物所有者の協力のもと見学講習を実施した。
  九重味淋は日本最古のみりん専業メーカーであり、本社工場の大蔵が登録有形文化財になっている。碧南市大浜地区の景観を特徴づける建物であり、大浜てらまち案内人の会の方々にとっても馴染みの建物であるが、大蔵の2階にあがったのは初めて。登録の際に所見を書かれた河田先生(名工大教授)から、この建物が220年前に名古屋市緑区から移築改造され、その痕跡が残っていることが解説された。九重味淋の関係者も初めて知ったということで、建物の価値が再認識される場となった。
  安久美神戸神明社は豊橋公園の南に位置しており、天下の奇祭「鬼祭」で有名である。周辺には豊橋ハリストス正教会(重要文化財)、豊橋市公会堂(登録有形文化財)があり、ほの国豊橋案内人の方々にとっても馴染みのある建物であるが、社寺建築の専門家である杉野先生(愛工大教授)から、他の神社建築と比較する中で神明社の建物について解説していただき、日本の社寺建築の中での位置づけというものについても理解していただくことができた。
  犬山市は愛知県内で最も登録有形文化財の数が多いところであり、城下町の16の町家も登録有形文化財となっている。そのうちの2つの町家で、普段見せてもらえない中庭や建物の内部、蔵などを見せていただいた。どちらも建物の一部をテナントとしており、犬山城下町の賑わいづくりに貢献している。所有者から建物保存に対する思いを聞かせていただくことができ、犬山の城下町に詳しいナイスで犬山の方々からも多くの質問が出され、関心の高さが示された。
  名古屋陶磁器会館は愛知登文会の事務局があり、陶磁器の展示や体験教室のほかALWAYS三丁目の夕日’64の映画ロケの場所としても活用されるなど、歴史的建築物の保存・活用に先進的に取り組んでいる。登録の際に所見を書かれた畔柳先生(元名城大講師)から表現主義的建築の建築様式の魅力を解説いただき、日頃建物を目にしているなごや歴史ナビの会・郷土史会の方々も建築当時の建物と現在の建物の違いなど認識を新たにする場となった。
  今回、この事業の実施を担当させてもらったわけだが、いずれの建物も所有者が愛着を持ち大事にされていることを感じるとともに、観光ガイドボランティアの方が高い関心を持ち、熱心に質問されていた姿が印象的であった。興味深い取り組みに関わらせてもらったことを感謝したい。
(2012.3.26/石田富男)