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オープンアーキテクチュアの理念と実践〜トリエンナーレスクール〜

日時:平成24年7月7日(土)14:00〜
場所:愛知芸術文化センター12F
ゲスト:山口県立大学准教授 斉藤理氏
進行役:武藤隆氏

 「オープンアーキテクチュア」とは、日頃あまり見ることのできない建築物を一般に公開するイベントのことで、建物見学を通して地域のまちづくりに貢献しようとする試みである。ゲストの斉藤氏は2007年より、日本初の建物一斉公開イベント「open!architecture」の企画、監修を務め、今回の講演ではその理念と実践について語った。
 では、建物を公開することが、どうまちづくりに繋がるのか。すぐれた建物には、その所有者や関係する方々にとって「誇り」といえる部分があると言えるが、まず、それを一般へ公開することで地域の「財産」となる価値に高めていこうとするねらいがある。
 それには価値を理解してもらい、それらが根付いていく工夫が必要だ。そもそも建物の見学ツアー自体珍しいものではないが、この企画は特定の目的に特化した観光「SIT(Special Interest Tour)」と呼ばれるもので、専門家による視察と名所をめぐる一般的な観光との中間にあたる。最近は今までの物見遊山的な観光が飽きられ、「SIT」の人気が高まってきているそうだ。そこで、重要となるのが建物の「つくり手」や「つかい手」の参加である。イベントでは、公開する建物に、実際に暮らしておられた方、施設の担当者、設計者など、その建物にゆかりのある方々に来てもらい、見学者に建物にまつわる話を直接聞かせる趣向となっている。一般の観光では入ることのできない所へ入れたり、ガイドブックには載っていない関係者の生の話を聞けたりするのはとても魅力的である。また、「SIT」の参加者は、その分野への関心が高く向上心のある人が多いので、イベント参加をきっかけに、その後のまちづくりに協力してくれる人も現れるそうだ。
 このように、「オープンアーキテクチュア」による建物の文化的価値・魅力の再発見が、熱心な参加者を生み、それらが新たなコミュニティ・ネットワークを形成することで情報を発信し、まちのブランド力や集客力の向上につながっていくというまちづくりを見せている。
 講演の最後には、名古屋での「オープンアーキテクチュア」開催について意見交換がなされた。参加者からは公開してほしい建物として「中村遊郭の建物」という意見が出されたが、斉藤氏からは、遊郭を紹介することでその地域のイメージにどう影響するかも考慮しなければならないと助言があった。イベント開催にはこうした気配りも重要である。

(2012.7.31/堀内 研自)