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まちづくりと担い手
  まちづくりには3種の人材が必要だと言われる。「ばか者」「わか者」「よそ者」がそれであるが、特に「ばか者」の存が大きい。「ばか者」とは本業をなおざりにして一心不乱にまちづくりに取り組む人々で「仕事をほったらかしにして、儲からんまちづくり一生懸命になってバカだねぇ」のニュアンスが込められている。この「ばか者」がいるが故に「わか者」(老若の線引きが難しい。50歳超えても青年弁護士という呼び方がある)や「よそ者」が集まってくる。
 確かにまちづくりの仕事をしていると、そういう人材がいる市町村といない市町村とでは、そうとう取り組み実態に格差があるのが事実である。

 某市の話。本業は建築士であるが、まちづくりに熱心に取り組んでいるA氏。よくあるのは仕事をとるためにまちづくり活動に参加する建築屋は多いが、彼の場合、まちづくりを進めるために、建築士の仕事をしている感じである。「ばっか野郎、てめぇは」など口は悪いが、そこには愛情が隠し味になっている。口が悪いだけでは人はついてこない。外からの視察要請もいやな顔もせず受け入れ、自らも全国の関連イベントに飛び回り、来年は全国大会を当市で開催することになったようだ。

 もう一人は最近A氏に紹介していただいたB氏。彼は私と同い年(おぉ、52歳になってしまった)で誕生日も一日違いである。家業は菓子問屋兼小売であるが、すでに息子に家業を譲り、自身はまちづくりに邁進している。「本業をなおざり」どころか「本業を譲って」である。
私「もう隠居ですか、ええですなぁ。こっちはその日暮らしで四苦八苦してるのに。」
B氏「いやぁ、いつなんどき脳の血管が切れて、やりたいことがやれんようになるかわからん。やれるうちにやるのが一番」脳梗塞になって倒れたB氏の父親の姿を自分に重ねているのかもしれない。

 最後の一人は大学の研究機関に属し、その某市に居住しているC女史。その意味では[(「ばか者」+「よそ者」)/2]の位置にある。大学と地域との連携をすすめていくのが仕事ではあるが、まちづくりや産業興し、活性化の仕掛けに熱心で、私が訪れるところ、訪れるところに必ず彼女の名前が出てくるのである。要所要所の押さえ方がうまい。「ばか者」的熱心さと「よそ者」的客観さをもって取り組む姿勢は、貴重である。我々コンサルタントの仕事のあり方の一つのスタンスを示している。

 A氏、B氏、C女史の存在が印象に残ったので、ここに書き留めたのであるが、実際は彼らだけでなく様々な人材がまちづくりを担っていることは言うまでもない。これからは団塊の世代が定年を迎え、人材が豊富に供給されてくるので、これからのまちづくりは益々面白くなってきそうだ。
(2004.10.5/井澤知旦)