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回覧板を考える〜地域情報の伝達方法〜

 今年、町内会の組長をやっているが、先日、回覧板が回って来ないということで、町内会長と探しに行った。すぐに、ある家のポストで見つかったが、そのお宅はずっと留守にされているようだ。こういうことがある度に、回覧板を回すというアナログな情報伝達手段が早くデジタル化されれば大きく手間が軽減されはずだと思ってしまう。自治会活動は単なる厄介ごとだと思っている人も多い昨今、こうした地域情報を伝えるための理想的な方法を考えてみる。
  まず、回覧板で伝える情報の内容であるが、個人にとっての重要度はかなり低い。そもそも、地域のコミュニティというものの重要度が低くなってきているから仕方がない。普通の人は少なくとも4〜5くらいのコミュニティに属していると言われているが、それぞれにどれくらいの時間属しているかでその重要度が分かる。一般的に最も重要度の高いコミュニティは仕事と家族(親族)のコミュニティ、次に友人や趣味のコミュニティ、そして最後が隣近所のコミュニティである。さらに、最近ではインターネット上のコミュニティも増加しており、ますます地域のコミュニティにかけられる時間が少なくなるだろう。そこで、できるだけ時間を拘束しない参加方法を考えないとますます地域コミュニティは衰退すると言える。
 では、私の町内で、実際に回覧板で伝えた情報を上げてみる。
1)総会、公園清掃の案内
2)年2回の町内会費の集金のお願い
3)町内運動会、防災訓練、ワークショプ等の案内
4)募金協力の案内
5)廃品回収の案内
6)自治会の活動報告 などである。
  この中でみんなが知っていてほしい重要な情報は1)、2)くらいで、下へ行くに従って興味の有る人だけが見てくれればよい情報となる。回覧板は月1〜2回、年20回くらい回すので、1)、2)レベルの重要な情報が入っているのは全体の1/4くらいだろう。インターネット上にはすでに自治会用に電子回覧板というサービスがあるので、この程度の情報量ならすぐにでもデジタル化できる。
  日本の世帯のインターネット普及率は80%を超え、60歳以上の高齢者でも、男性では50%以上がインターネットの使用経験があるというデータから、普及率やITスキルの面ではそろそろ電子回覧版の時代が来てもおかしくないと思えるが、よく考えるとそうでもない。実際、わざわざ回覧板程度の情報、4回に1回くらしか重要な物がない情報を月に1〜2回コンピューターの前に座ってサイトを開いて見にはいかいないだろう。これがメール配信となっても、興味のない情報は見ないので同じだ。逆にこれなら回覧板の方が「早く次の人へ回さなければならない」という義務感がある分、目を通す可能性は高いと思える。
 現代は自分のために必要な情報、興味のある情報はそれなりのITスキルがあればかなりの情報を手に入れられる。しかし、回覧板の情報のように、知っていてほしいが積極的に興味を示さない情報を、手間をかけずにどう伝えるかというのはなかなか難しい。
 話は変わるが昔、母の実家の集落では有線放送という設備があった。地域の情報を役場が1日2回くらい各戸に置かれたスピーカーから放送するというものだ。花火大会のお知らせや、個人の冠婚葬祭の情報まで、さまざまなことを放送していた。放送時間も絶妙で、主婦が食事の支度をする時間、12時前とか6時前とかだった。この時間は主婦の多くが家にいて、炊事をしながら自然に情報が耳から入ってくるという具合だ。「ながらダイエット」というダイエット方があるが、これに似ている。わざわざ時間を取らなくても、TVを見ながら、家事をしながらダイエットができます、というもので、地域の有線放送も炊事をしながら「ながら聴取」で情報が得られるという利便性が地域情報を伝えるのにとても都合が良いように思える。この「ながら聴取」を現代のライフスタイルに置き換えてみるのが良いだろう。カギとなるのはTVである。各世帯のライフスタイルに合わせ、音声かテロップで地域情報を流してくれるのがいいだろう。特に積極的に見たい番組がある訳でもなく、なんとなくTVを見ている時に発信するのが理想的と思えるのだがどうだろうか。後で確認できるようなサービスも同時にやった方がよい。これからのTVは積極的に見たいものは好きな時にネットにアクセスして見られるようになっていくだろうが、なんとなくTVを見ている、つまり「ながら視聴」しているときの時間にどんな情報を流すかに可能性を感じる。

(2011.11.21/堀内 研自)