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地域が元気になるまちづくり〜高齢者の才能を活かして〜

■超長期の人口変動
  日本の人口を平安期から今日までの超長期間をみると、明治元年である1868年の3,330万人からピーク時である2008年の12,808万人へと140年で3.8倍となった。鎌倉幕府時代の1192年の757万人から明治元年までの約680年間の変化を見て、明治以降の近代化がいかに急激な人口増加をもたらしたのかが分かる。しかし、日本はすでに人口減少期に入り、近代化の人口増加ペースと同様、いやそれ以上のペースで激減していくと予測されている。今から百年前は5,000万人を超えていたが、今から百年後は4,300万人程度になる。
■人口減少に伴う対応
  細かい数字を並べてきたが、人口はまちづくりの基本指標であり、その動向は経済活動、公共サービス水準や総体としての地域活力を左右するものである。人口が減り、国民の給与総額が減少すれば、それに比例して消費活動も減少する。税収も落ちるので、公共サービスの見直しも行われる。自治体が100の税収で100人に公共サービスを提供していたと仮定して、人口が50人になれば、@同様のサービス水準を維持するために税金を2倍にする、A半分のサービス水準で薄く対応する、B同一水準で集約的に対応するかの選択になる。自治体がとるまちづくりは、Bの対応であり、市街地の拡大から縮減に方向転換し、公共施設の統廃合やコンパクトな市街地の形成を標榜している。
■65歳以上の高齢者層の活用
  ところで、人口が増加する唯一の年齢層が65歳以上の高齢者層である。現在3,100万人の人口が、三十年後に3,900万人とピークを迎える。とりわけ、これまで流行を作り、社会制度を変えるほど影響を持った団塊の世代(昭和22〜24年生まれ。出生当初の800万人が現在490万人)のすべてが、来年度で第二の定年と言われる65歳を超える。特に男は会社から地域に戻ってくる。この年齢層は多様な経験を積み、多才であるので、この人材をいかにうまく活用するのかが、地域の元気を左右するといって過言でない。
■高齢者と地域ボランティア
  高齢者の8割は元気であり、地域でボランティア活動に精を出す人が増えている。例えば、NPOの団体数の変化を見ると、わずか五年間で4割も増加し、福祉・社会教育、まちづくり・子どもの四分野で顕著である。感覚的には女性は福祉に、男性はまちづくりに関わることが多いように思える。福祉は今そこにある危機をどう乗り越えるのか、まちづくりは中長期を見据えてどう変えていくのかの違いはあるが、多くの人々が地域に係わることで地域が元気になっていくことは間違いない。
■才能を活かす居場所さがし
  先般も名古屋市内の某生涯学習センターで講演する機会があったが、平均年齢70歳ぐらいであろうか、その熱心に聞き入る様には迫力があった。まちづくりに定年はない。持てる才能を活かす居場所が見つかれば、まちづくりは最高のエンターテイメントになる。健康に良いし、来訪者も増えて消費も拡大していく。果たして「わりなき恋」も増えていくだろうか?

*この文章は平成25年6月5日付中部経済新聞の「オピニオンAGORA“オープンカレッジ”」で掲載されたものを一部修正して再掲しました。名古屋学院大学経済学部教授の肩書で投稿しました。

(2013.7.23/井澤知旦)