現在の位置:TOP>まちのトピックス>すまいまちづくりコラム>文化財建造物の保存活用をめざした連携の広がり WWW を検索 スペーシアサイト を検索

 
 

文化財建造物の保存活用をめざした連携の広がり

 愛知県国登録有形文化財建造物所有者の会(略称:愛知登文会)の第3回総会が6/22に開催された。これまでの総会が近代的ビルの一室で行われたのに対し、今回は登録有形文化財である名古屋陶磁器会館のホールを借用。また、総会、講演会終了後に茶話会と銘打ち、各地から持ち寄ったお酒やお菓子をつまみながら交流を深めた。所有者をはじめ、文化財の保存活用に関わる専門家であるあいちヘリテージマネージャーやなごや歴まちびと、さらに京都登文会からも出席いただき、文化財の保存活用に関わる連携の広がりを感じる場となった。

 府県単位の登録文化財の所有者の会は、大阪府で2005年に設立されたのを皮切りに京都府、秋田県につぐ4番目。この3月には和歌山県でも設立され、兵庫県でも設立の動きがあると聞く。
  愛知登文会の事務局のお手伝いとして他県の動向を調べる中で、京都登文会の総会が6/8に開催されることを知り、登文会会長とともに参加させていただいた。会場は同志社大学。ここには5つの重要文化財と5つの登録有形文化財があり、少し離れた場所に京都市指定文化財「新島旧邸」もある。これら文化財の紹介とともに大河ドラマ「八重の桜」ゆかりの新島旧邸の見学会も行われた。大学内にこれほどの文化財があるとは。京都の奥深さを感じることができた。

 また、文化財の保存活用の専門家であるヘリテージマネージャー養成が各地で行われ、2003年のひょうごヘリテージ機構を皮切りに各地でヘリテージマネージャーのネットワーク組織が作られ、昨年10月には「全国ヘリテージマネージャーネットワーク協議会」が設立された。

 6/1にはひょうごヘリテージ機構の10年間の活動の総括を行うヘリテージマネージャー大会が行われた。愛知登文会シンポのパネラーとしてお願いした縁でこの大会のことを知り、参加させてもらったが、全国各地からの多数の参加者に驚いた。会場は旧神戸生糸検査所の建物を活用して神戸市が開設したKIITOデザインクリエイティブセンター神戸。6つの会場でそれぞれ3つ、合計17のフォーラムが行われ、各地での取り組み報告が行われた。参加者は3つを選ぶわけだが、どのフォーラムも多くの参加があり関心の高さが伺えた。

 このような3つの総会・大会に参加することができ、文化財建造物の保存活用に対する関心の高まり、連携の広がりを感じることができたが、一方でまだまだ課題は多いことも実感した。当然のことながら、文化財の保存活用にあたっては維持管理や補修が大きな問題で、その費用捻出に所有者の方々は苦労されている。残したいという強い思いがあっても何ともできないというのが現状であり、そのような所有者の思いに応えた活動になっているかという点だ。文化財を活用しながら保存する制度として創設された登録制度が、保存を重視するあまりに活用の足かせになっている事例もあるようだ。所有者の会として、そんな所有者の思いを集約し、反映させていくことも重要な使命だろう。この視点も忘れずに愛知登文会の活動支援をしていきたいと思う。

(2013.6.26/石田富男)