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五色園 〜壮大なスケールの宗教公園〜

 五色園とは日進市岩藤町にある宗教公園である。20万坪の広大な森の中に、親鸞聖人の生涯を極彩色に塗られた等身大の彫像でジオラマ風に再現したという、非常に珍しい公園である。その約100体あまりのコンクリート彫像を作成したのが、以前、このメルマガで紹介した熱田区に住んでいた浅野祥雲(しょううん)である。この祥雲、珍スポット愛好家の間では有名な存在で、最近ではテレビ朝日の人気番組「有吉&マツコ 怒り新党」でも取り上げられるなど、徐々にその名が知られつつある人物である。祥雲については、以前のメルマガを参照して頂くとして、今回は祥雲の代表作である五色園を紹介する。今は閑散としていて、珍スポット界でしか注目を浴びないこの公園も、開園当時は一大テーマパークとして壮大なスケールの観光スポットであった。
  この公園の創設者は森夢幻(もりむげん)。30代後半で教師から宗教家に転身し、その後の布教活動により全国に30万人もの信者を集めたとされるカリスマである。そのプロデュース能力も優れており、五色園はその集大成とも言うべき巨大宗教公園であった。公園の誕生は昭和の初め、もともとは名古屋市名東区に自身が開基した極楽山極楽寺というお寺に、高さ38mの親鸞像と、それを覆う高さ50mのお堂を建設しようと寄付を募るものの、規模が大きすぎて目標金額が集まらず、代わりに、現在の日進市に約20坪の土地を購入したことが始まりとされる。開園は昭和9年であるが、その後段階的に彫像や施設を拡大させていったようで、昭和15年ごろのパンフレットを見ると、敷地は現在よりも大きく、本堂や六角堂、宿坊、寺務所といった宗教施設の他に、温泉や宿泊施設、弓道場、動物園などが点在する一大テーマパークだったことが分かる。昭和初期は、庶民が観光を楽しむ余裕が増えてきた時代で、全国に信仰をテーマとした新しい観光施設が次々に誕生した。象徴的なのが、地方に突然現れる巨大な大仏や観音像であり、その多くがこの時期に作られているそうだ。1体の仏像だけでも多くの人を呼べた時代に、五色園のように100体にも及ぶ実物大の彫像群で、宗教物語の名場面を体感できるという施設は、現代のディズニーランドやUSJと共通するコンセプトであり、当時の人にはとてもインパクトがあっただろう。
  この五色園、観光としてブームの去った後も、商業目的のテーマパークではなかったことが幸いして、開園から80年も経過した今も健在である。宗教施設以外の建物はほとんど廃墟のようになっているが、彫像群は修復が何度も重ねられた痕がうかがえる。平成21年からは祥雲ファンの呼びかけで地元住民やボランティアが毎年少しずつ修復を行っているそうだ。80年前に仏教の教えを広めることを目的にこれだけのスケールのものを作り上げ、それが修復を重ねながら今も生きているというのは奇跡に近いと思う。

創設者 森夢幻
創設者 森夢幻の巨大な彫像
親鸞聖人のジオラマ
このような親鸞聖人の等身大(2.2mくらい)のジオラマが点在する
祥雲像
痛みのひどい彫像もあるが、この風合いが祥雲像の魅力でもある

(2015.6.8/堀内研自)