現在の位置:TOP>名古屋まちづくり紹介>まちづくりあれこれ> 伝統を今に伝える「のんぼり屋」 WWW を検索 スペーシアサイト を検索

 

伝統を今に伝える「のんぼり屋」(愛知県岩倉市)

 先日、岩倉市にある「のんぼり屋」の工房を見学させていただく機会があった。
日本さくら名所100選にも選ばれている五条川の桜並木で有名な岩倉市だが、毎年2月から4月初旬にかけて五条川で行われる鯉のぼりの糊落とし「のんぼり洗い」も、その時期の風物詩となっている。五条川に浮かぶ色鮮やかな鯉のぼりを見ようと、毎年多くの人が見物に訪れている。この「のんぼり洗い」から、鯉のぼりを制作する旗屋は「のんぼり屋」という愛称で呼ばれている。
 「のんぼり屋」はかつては五条川沿いに4軒続いてあったという話だが、現在は五条川沿いに2軒のみとなっている。今回見学させていただいた「旗屋中島屋代助商店」は、嘉永元年(1848年)に紺屋(こうや=染め物屋)として創業され、明治初年にのぼり屋を始められた旗屋だ。現在は、鯉のぼりだけでなく、旗、幕、のぼり、暖簾、風呂敷などが制作されている。
 鯉のぼりづくりの工程では伝統的な技法が守られており、当然ながら「のんぼり洗い」も数百年前から続く光景である。川で洗い落とされる糊は、染色しない部分に防染の役割として描かれるものだが、材料は米ぬかと塩で作られており、生物に無害のため川の魚が餌として食べることで川の浄化も自然となされている。先人がそこまで考えていたことに大変驚いたが、お話をうかがう中で、現代の技術に頼ることなくそれらの伝統を守り受け継いでいる職人の強い気持ちがひしひしと伝わってきた。次に「のんぼり洗い」やのんぼり屋の鯉のぼりを見かけたときは、これまでとは違った気持ちで眺めてみたい 。

旗屋中島屋代助商店
味のある「旗屋中島屋代助商店」の外観
工房の中庭
のぼり旗に描かれた糊は天日干しされる(工房の中庭で)

(2012.8.27/喜田祥子)