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天王子ども塾「津島なぞ解き探検隊」
日時:2001年8月23日(木)・24日(金)

 津島のまちづくりを考える市民組織・天王文化塾が、「小さなまちづくり人」を発掘する子供向けイベント「天王子ども塾」を8月23・24日の2日間にわたって開催し、地元の小学生約60人とボランティア約20人が参加した。地域に残る古井戸などをテーマにフィールドワークや井戸を見直す提案、竹を編んで井戸の蓋を作る作業などを行い、地元の大人達との交流の中で自分達が暮らすまちについて考えた。

 初日の23日は午前中に「町並み探検」として3〜4人のグループに大人のガイドが一人ずつついて古い町並みを探訪した。街道筋に残る古井戸の一つには、普段は出されていない「つるべ」が取り付けられ、子供達は珍しそうに井戸水を汲み上げていた。昼食は流しそうめんと太巻寿司。大龍寺の駐車場で、竹を切り出してつくられた樋を流れるそうめんを歓声をあげながら食べた。そして午後からは本堂で井戸を使ったことのあるお年寄りの話を聞いたり、井戸を見直すための提案を行った。子供達からは、「井戸で野菜や果物を冷やす」「井戸を美しく飾る」「井戸の中にバンジージャンプする(!)」といった思い思いの提案が出された。

 2日目の24日は、午前中は前日と同じグループにわかれ、それぞれ「井戸の周りを花壇で飾る」「竹を編んで井戸の蓋をつくる」といった作業をした。竹を編む作業は、地元の竹材店「員弁屋」のご主人から手ほどきを受けた。井戸には子供達の手でつくられた新品の蓋がかけられ、周りは花で飾られ、見違えるようにきれいになった。この日の昼食は地元のお寿司屋さん「末広寿司」がつくった「手作りモロコちらし寿司」で、成信坊という寺の本堂で、大きな桶に盛られた寿司を子供達がそれぞれしゃもじでよそって食べた。とても好評で、「おかわり!」といって何杯も食べている子が目立った。その後、再びグループにわかれ、「わたしの町の宝物・おもしろいもの見つけたよ」をテーマに、前日と午前中に撮影した写真を素材に探検ポスターをつくり、グループごとに発表を行った。最後に、アイスクリームを食べてから、解散となった。

 私は準備にはあまり関わっておらず、1日目の「流しそうめん」から翌日にかけて手伝いをしたのだが、その印象から言うと、子供達にとっては普段の生活をしていたのでは得られない貴重な体験となったのではと感じた。じっくり観察しながら地域を歩いたり、手や体を動かす作業を通してまちへの関わりを持ったり、学校や塾の先生ではない地域の大人達と話をしながら、身近なまちの面白さを知ることができたと思う。津島というまちを、それまでよりも好きになった子が多いのではないだろうか。子供達は市内を中心としたいくつかの小学校から来ていたのだが、子供同士はすぐ友達になるし、大人にもすぐ打ち解ける。こういった子供時代に地域へかかわる体験を豊富にしておくことが大切だと感じる。また、子供達の活動により地域の人々に古井戸を見直す気持ちが芽生えたとしたら素晴らしいことだ。一時的に井戸を飾っても、後の面倒を見る人がいなければまたもとの姿に戻ってしまうが、今回は子供達が井戸の周りに飾った花壇の水やりを近所の人が引き受けてくれている。近隣の人達も何か感じるところがあったはずだと思う。

 ただ、今回少し残念だったのは、時間の制約もあり、準備や片づけ、掃除などを子供達と一緒にできなかったことだ。そういったことも含めて大人と子供が一緒に作業できるとよかったと思う。今後の課題であろう。

 今回の企画は天王文化塾の主催であるが、企画・実施にあたっては随分いろいろな組織・人が関わっている。「子ども塾」の構想はもともと文化塾で持っていたのだが、それに愛知教育大学の寺本先生が関心を持ち、企画づくりに参加するとともに、ゼミ生の山口さんを実働部隊として送り込んだ。企画は半年位前から始められ、文化塾のメンバーと山口さんなどが議論しながら形にしていった。実施にあたっての資金は、愛知県の「青少年健全育成モデル事業」の補助金やロータリークラブから支援を受けている。当日は子供達と一緒にまちを歩くガイドとして地域に詳しいお年寄りなどに参加してもらい、井戸の蓋づくりのために竹材店の協力を得、またイベントの拠点として地域のお寺が使われている。流しそうめんやモロコ寿司なども地域の店の協力で出すことができた。たいへん多くの人達の協力によって企画が現実化した。

 今後は「フォローアップ講座」として、今回参加した子供達を対象にした歴史講座の開催や「古井戸通信」の発行が予定されている。そして文化塾としては来年もまた「子ども塾」を開催したい意向だそうだ。
子供達が地域の人達と知り合い、好きになるきっかけとなる今回のようなイベントは、是非定期的に行ってほしいと思う。資金や人材面が問題となるが、来年も実現してほしいと願っている。
参加した子供達とボランティアの人達

つるべを使って井戸水を汲む


花で飾られた井戸の前で


流しそうめん


井戸の蓋を竹で編む


(2001.9.7/伊藤 彩子)