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高浜市の再開発とかわら美術館
中部都市学会都市視察研究会(1995.12.10)

  

1.高浜市の概要

人口:36,028人(95年国勢調査速報値)。高度成長期に急増したが、昭和50年以降横這い。近年は増加傾向にある。地場産業として瓦、卵がある。

2.視察の概要

@三高駅周辺地区市街地再開発事業

○駅東:0.7ha(組合施行)

  • 地権者32名。29名が地区外移転。2800uの駅前広場と23m道路(延長70m)等を整備。
  • 建物は14F。1・2Fが権利床で店舗(ゲームセンター、美容院等)。3F以上は住宅。64戸のうち、権利床は3戸。61戸は参加組合(一光開発)による住宅。2350〜3300万円/戸。入居者のうち市内住み替えが24世帯。名古屋市からが7世帯。94.12.25完了。

○駅西地区:1.7ha(市施行

  • 地権者48名。47名が地区外移転。3600uの駅前広場と16mの道路等を整備。建物は3棟。
  • A-1棟は13F。1F店舗。2F生涯福祉健康センター、3F日本福祉専門学校。4F以上は愛知県公社の賃貸住宅。来年4月より供用開始。県公社が建設し、市が購入、福祉プロジェクトとしては初めて。知多半島に拠点のある日本福祉大学が三河への拠点進出の拠点として位置づけ。養護老人ホームの建設を通じて大学との接点があったことが誘致の要因に。
  • A-2棟は駐車場ビルで3F、一部4F。220台。市が建設。
  • B棟は参加組合員による住宅。119戸。来年1月より起工。平成9年度完了予定。

Aかわら美術館

  • 94.3末竣工。95.10.7開館。文化庁よりコンクリートの養生のため2夏経過しろという指示あり。
  • 設計は内井昭蔵氏。

3.雑感

【注目すべき小都市:高浜】

 参加者から人口5万人以下の市は詐欺だという発言があったが、全国では2万人以下の市も結構ある。最下位は歌志内市(北海道)の7,000人か。今や人口規模だけを基準にする時代ではない。

 高浜市は愛知県で一番人口の少ない市であるが、都市としての取り組みには注目すべきものがある。以前、都市ランキング試案で都市公園の増加指数ランキングがトップであることを示したが、区画整理や再開発に積極的に取り組む姿勢は評価できよう。福祉施策にも力を入れていて、県営住宅ではシルバーハウジングも実施している。再開発で参加組合員をうまく使ったり、県公社を持ってくる当たりは、外部の力をうまく活用しているといえるだろう。

 市長までもがこの研究会に参加し、若いやり手の課長が取り仕切っている。「高浜市の財産は人財」と市長が述べていたが、やる気のある市職員がこれから、高浜市をどう変えていくのか、今後の展開が興味深い。

【残念なPR不足】

 ただ、残念に思うのは、このような取り組みがほとんど知られていないこと。こんな小さな都市で再開発を実現したり、かわら美術館のようなものを作ったことはもっと自信をもってPRすべきだろう。内井昭蔵の作品であれば建築雑誌にとりあげられてもおかしくないはずなのに、掲載されていないのは何故だろう。高浜市の次の展開は外に向かってアピールしていくことではないだろうか。

【地方小都市における再開発を考える】

 地権者のほとんどが転出してしまった再開発は、再開発の意義からみれば、邪道であるかもしれない。本来の再開発は、地権者がそこに住み続けることに意義がある。

 しかし、高浜市のように戸建居住の方が一般的であり、再開発の建築物に権利床を確保しなくても、駅前にすぐ近くに戸建住宅の確保ができるのであれば、戸建住宅を選択するものが多くてもそれは当然のことといえよう。

 大都市の再開発では、再開発地区の周辺に戸建住宅を確保することは困難であり、再開発地区から転出することは、住民の追い出しにつながってしまう。したがって、地区外転出はできるだけ押さえるように努めなければならないが、高浜市においてこのような考えを当てはめる必要はないといえるのではないだろうか。

 ただし、地区外転出の詳しい状況については時間がなくて聞いていないので、もしかしたら、地権者はとんでもないところに転出してしまっているのかも知れないが。

 地区外転出によって地権者の合意を得、参加組合員の力によって再開発を実現していくこの手法は、地方小都市における再開発の1つのモデルを示しているといえるかもしれない。

【かわら美術館】

 かわら美術館への感想として、期待とのギャップが語られていたが、それは美術館に博物館の機能を期待したが故なのだろう。「ここに来れば、全国の瓦に関する情報が手に入ると思った」という発言は、まさに博物館の機能を期待していたといえる。しかし、瓦をテーマとしたミュージアムと聞いたら、そのようなものをイメージするのは当然のことなのかもしれない。

 瓦をテーマとすることも瓦を美術品として扱うことも興味深い。が、瓦はやはり生活文化の1つであり、美術館という範疇には収まりきらないのかも知れない。

 美術館として見た場合も少し不満が残る。展示スペースが少なく、もの足りない。開館記念展覧会では入場料が1000円必要だった。入場料1000円の展覧会というのは結構あるが、展示スペースが少なく、あっけなく見学を終わってしまって、だまされたような感じがした。

 地方美術館ブームで小都市でも立派な美術館、博物館が次々に作られている。問題はこれをどう使いこなしていくかだろう。

(1995.12.22/石田 富男