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市営住宅

●千種台ふれあいタウン(千種区)

 千種台地区は、市東部の緩やかな起伏に富む丘陵地にある。戦後の住宅不足を解消するため、1949(S24)年から大規模な住宅団地に建設に着手したものであり、戦後の本格的な公営住宅団地第1号として、ほぼ完成した1957(S32)年当時は見学者が多く訪れたという。多摩や千里ニュータウンにさきがけたニュータウンであるといえる。最終的には1979(S51)年までかかって建設が行われ、58.6haの敷地に26団地、約3,500戸の住宅団地が形成された。

 しかし、建築後30年が経過し、団地の狭小・老朽化が顕著になるとともに、駐車場をはじめとした都市施設の不足が問題となり、1988(S63)年度に策定された「名古屋市新基本計画」において、老朽化した市営住宅等の建て替えにあわせて、各種施設、道路、公園等の整備を含め、高齢者にも配慮した総合的・計画的なまちをづくりをすすめる「千種台ふれあいタウン」構想を位置づけた。緑に恵まれた環境や変化に富んだ地形を生かし、個性豊かな住宅を整備していくこととし、世代間の交流が活発に行われ、心の豊かさとふれあいのあるモデルタウンの建設をめざしている。

 1991(H3)年度より工事に入っており、約15年間で1,950戸(1965(S40)年以前に建設された住宅を対象)を除却し、約2,250戸を建設する予定である。すでに、北希望荘128戸、楠荘209戸、希望ヶ丘シルバー住宅21戸、霞ヶ丘荘272戸が完成している。現在、はざま荘の工事がすすめられるとともに、地下鉄4号線の新駅が設置されるセンター地区の整備が進められている。


●希望ヶ丘シルバー住宅(千種区)

 名古屋市第1号のシルバーハウジングであり、千種台ふれあいタウン整備事業の一環として1996(H8)年度末に完成し、1997(H9)年5月1日より公用を開始している。

 単身向け15戸、世帯向け6戸。高齢者専用住宅であり、住戸内は段差解消やトイレ、浴室への手すりの設置など高齢化対応を行うとともに緊急通報システムが設置されている。緊急時の対応や生活相談を行う生活援助員(LSA)が配置されており、福祉サービスが受けられるようになっている。

 LSAは隣接するなごやかハウス希望ヶ丘(特別養護老人ホーム、デイサービスセンター、在宅介護相談センター)に勤務(午前10時〜午後4時)しており、通常は居住者の相談や病気の時の買い物・食事の世話などを行う。時間外は特別養護老人ホームの宿直が対応することとなっている。

 周辺の緑を残しながら敷地の南側に親水空間を整備しており、建物も敷地の傾斜を生かしつつも高齢者に配慮した設計がなされている。避難施設としてらせん状のすべり台を設置しているのはユニークである。

 玄関の扉は引き戸で、入口は十分な幅があり、さらに玄関のあがり框をなくしたため、車いすのままで室内に入ることができる。入口の横には腰掛けに使える棚も付いている。

 なお、千種台ふれあいタウンでは、なごやかハウス希望ヶ丘を中心に4ヶ所、80〜90戸のシルバー住宅が供給される予定で、現在、霞ヶ丘荘で23戸(本年11月より募集開始)、はざま荘で23戸が建設中である。


●一つ山荘(天白区)

 市の東部の丘陵地に位置する住宅団地で1957(S32)、58(S33)年度に建設された簡易耐構造平屋438戸を建て替えものであり、1983(S58)〜1992(H4)年度に市営住宅616戸、定住促進住宅75戸が建設された。

 第1種低層住居専用地域の規制のため、3、4階のタウンハウスで構成されている。2つの丘があり、地形の変化にあわせて、ゆるやかに変化する個性のある景観を形成している。眺望のよい丘の部分は公園としており、良好な眺望を特定の住宅が占有するのではなく、眺望を共有のものとするとともに、稜線が崩れないように配慮している。造成のためにできた斜面緑地も丁寧な手入れがされており、居住者の管理意識の高さが伺える。

 2つの公園を核として団地内をめぐる散策路が設けられており、途中でアスレチック可能なベンチも配置されている。

 住棟は、階段の取り方によって2つのタイプが計画されており、この2つのタイプの間をコモンスペースとし、ここから各住戸にアプローチするようにしており、コミュニティが自然に生まれるように配慮している。南側の住棟には斜面住宅の特徴を取り入れ、1階から3階までの直通階段を設け、2階部分には水平方向にも移動可能な廊下を設けている。各住戸の玄関前は、他の住戸への通り道にはならないようにして独立性を確保し、特に1階の玄関前は植栽を可能としている。北側の住棟は、折り返しの階段棟とした南入りタイプであり、コモンスペースから通り抜け路地を通って、各住戸にアクセスできる。

 住戸は3DKであり、外部への開放性を確保するため、通り抜け路地の部分を利用して、DKに窓を設けている。

 建て替えにあたっては、従前居住者に対して居住実態と住要求を把握する調査を行い、住生活に沿った計画とするとともに、地形的な特殊性を調査して、移動の負担を軽減し、可能な限り自然環境を残して景観になじんだ計画を追求している。応募も多く、人気の高い住宅である。名古屋市の市営住宅で最も質の高い住宅といえるだろう。


(1998.12.11/石田 富男)