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失われた景観戦後日本が築いたもの /松原隆一郎 著

PHP新書/2002年11月29日発行

 近年、都市景観の対する関心が高まっている。国立の景観裁判は画期的であり、それが与えた衝撃は大きい。名古屋市でも白壁地区のマンション建設で20mを超える部分を禁止する仮処分も出された(その後、階数を1階減らす。仮処分命令取り消し)。国土交通省では景観基本法を制定しようとしている。

 本書は、国立の判決が出される前に出版されたものであるが、生活圏で生じた4つの景観問題の事例をとりあげながら、わが国における日常景観がなぜこれほど奇妙で見にくいものになっているかを考察している。
まず、ロードサイドショップによって「清潔な廃墟を思わせる奇妙な景観」がつくりだされている郊外景観をとりあげている。フランチャイズ・チェーンによる全国一律化、車窓から見られることを前提とした外観、さらに大店法、大店立地法の問題にも言及している。
 2つめは筆者の故郷でもある神戸市。都市開発の分野では様々な先進的取り組みが注目されている都市であるが、住吉川景観訴訟では住民の訴えに対し、日常景観を破壊し高架を建設してしまった。震災後に一変してしまった景観についても触れられており、筆者の嘆きがこめられている。
 3つめは美の条例で有名な真鶴町。条例制定までについては、関わった3人の専門家による著作「美の条例-いきづく町をつくる」で知っていたが、第3者の目から住民がこの条例をどうみているかについても言及しているのが興味深い。
 4つめは電線地中化問題。当初は事業者負担によって、需要の高い大規模な商業地域やオフィス街などで行われてきたが、それを住宅地まで広げようとしている。しかし、なかなか進まないのが現状であり、その背景をわかりやすく解説している。アメリカでは安全性から電線の地中化が推進されたが、日本ではその問題発生が半世紀遅れたために電線を「被覆」する技術が開発され、安全のための地中化が進まなかったとという。

 社会経済論として書かれたものであるが、非常に興味深い事例をとりあげ、それをわかりやすい文章で語っている。文章の書き方としても参考にしたい本である。

(2003.12.27/石田 富男)