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登録有形文化財−保存と活用からみえる新たな地域のすがた/佐滝剛弘著
 勁草書房/2017年10月20日 発行

 愛知登文会主催の全国登文会シンポジウムで基調講演をお願いした佐滝剛弘氏の最新作。佐滝氏は「郵便局を訪ねて1万局」や「世界遺産・聖地巡礼」といった著作があり、歴史的な建造物を見て回るのが好きな一「オタク」と自称されているが、全国1万1千件の登録有形文化財のうち9千件以上を訪問したというツワモノだ。名だたる世界遺産をほぼすべて見てきたという氏が今、注目しているのが登録有形文化財だ。
 本書では、文化財らしからぬ多様な登録有形文化財を紹介し、その多様性こそが登録有形文化財の存在意義だとし、様々なジャンルごとに全国の登録有形文化財を並べたり、比べたりすることによってその魅力を浮き彫りにしている。私自身、愛知登文会の事務局支援を通じて愛知県内を中心に様々な登録有形文化財と接し、話を聞く中で、その類似性や特徴に気づかされていただけに、全国の登録有形文化財を「建築家たちの競演」「有名施設・著名観光地を補完する建物群」「生糸をささえた建築群」「著名人にゆかりのある建物群」「登録有形文化財に『泊まる』」などといった視点での見方は興味深く、訪問したいと思った登録有形文化財もたくさんあった。各都道府県の「登録第一号」などのコラムも面白い。
 愛知県のものも多数紹介されている。佐滝氏は愛知県出身で愛知登文会の賛助会員にもなっていただいているのだが、偶然にも愛知登文会会長と同級生でもあった。この5月の総会にも参加いただき、その際のことも本書で紹介していただいた。
 街ぐるみでの活用や地域づくりの核としての活用についても紹介され、登録有形文化財がまちづくりにおいて重要な役割を果たす可能性を秘めていることを示唆している。実際に訪問した経験に基づく記述からは登録文化財に対する思いが伝わってくる。登録有形文化財の全貌を俯瞰する上で絶好の書といえよう。ぜひ、本書を読み、愛知登文会が主催する建物特別公開(本メルマガ、まちのトピック参照)にも参加いただければと思う。

(2017.10.25/石田富男)