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東京遺産 −保存から再生・活用へ−/森まゆみ著

岩波新書/2003年10月21日発行
 森まゆみ氏は地域雑誌「谷中・根津・千駄木」を発行しながら、「谷根千(やねせん)」をはじめとした様々なまちづくりに関わり、まちづくりの世界では有名人だ。作家としての著作も多い。

 本書はそんな著者が“かかわってきた”東京における様々な保存運動がとりあげられている。その中には、有名な東京駅や上野奏楽堂のような成功事例もあれば、丸ビルや同潤会アパートのような失敗事例もある。それぞれの取り組みが様々なドラマを持っており、読み物としても興味深い。何故、安田邸は保存に成功したのにサトーハチロー邸は保存に失敗してしまったのか。東京にある建築物は「歴史的建築物」として第一級のものが多く、地方都市での取り組みの参考にはならないと思う人がいるかもしれないが、本書に記録されている様々な経験は、全国各地で進められている近代建築物の保存・活用の取り組みに示唆を与えてくれるだろう。

 著者はこの20年、たえず、「なぜ古い建物を残すのか」と自問自答してきたという。20年で状況は驚くほど変化し、近年では古い建築物を活用することがブームになりつつある。この地域でも「残したい建築物」は多い。著者のように、古い建て問の保存や再生、それを活用することを通じて、多くの人と出会い、仲間をつくり、人生を豊かにしていきたいものである。
(2004.4.30/石田 富男)