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「多数決を疑う-社会的選択理論とは何か」/坂井豊貴 著
 岩波新書/2015年4月21日発行

 2014年12月の衆議院選挙、2015年4月の統一地方選、その後の各自治体での住民投票など、実際に投票行動をしたり、報道で見聞きしたりすることが多いと感じている中で手に取ったのが本著である。
 投票率の低さや選挙区制度の問題、住民投票実施に至るまでの経緯や手続き、投票行動の前に政策や情報が伝わっているのかどうかなど様々な課題があることは多くの人が認識をしていると思う。日本を含む多くの国で使われている「多数決」という意思集約の方式は、他と比べて優れているから採用されているわけではなく慣習であるそうだ。また、「多数決」は少数意見が尊重されないということは容易に想像できると思うが、多数派の意見でさえも尊重されないといった様々な弱点も内包している。1人の有権者が1名の候補者だけに投票する単記式の「多数決」ではなく、3人の候補者がいれば順位付けの投票を行い、1位は3点、2位は2点、3位は1点と配点し、その合計得点で当選者を決めるボルダルールなど、「多数決」よりも優れた様々な意思集約の方法がわかりやすく紹介されている。
 「多数決ほど、その機能を疑われないまま社会で使われ、しかも結果が重大な影響を及ぼす仕組みは、他になかなかない。とりわけ、議員や首長など代表を選出する選挙で多数決を使うのは、乱暴というより無謀ではなかろうか」という著書の考えには納得させられた。民主的・民意という言葉を深く考えるためにも読んでいただきたい一冊である。

(2015.10.26/山崎 崇)