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平らな国デンマーク 〜「幸福度」世界一の社会から〜/高田ケラー有子著

NHK出版/2005.8発行<

 タイトルにある「平ら」とは「平等」とか「障害がない」ということを意味しているのですが、このタイトルからも分かるようにデンマークという国がいかに人にやさしく、暮らしやすい国かということがよく分かりますし、読めばきっと羨ましいと思うことでしょう(特に、私のように子育て中の人は)。
 内容は、子育てに関することが中心になっており、著者が妊娠中にデンマークに移住して以降の自身の生活をもとに、この国での出産・子育てにからむ社会的な支援システムや保育〜小・中学校の教育システム、そしてその背景にある人々や地域、国の考え方、国民性など、生活する中で感じたことを分かりやすく解説しています。

 私が羨ましいと思ったことを例に挙げますと、(カッコ内は日本に対する私の感想)
・出産にお金が全くかからない
 (⇔いくらか戻ってきますが、負担がある)
・地域での子育てサポートが制度化され、定着している
 (⇔自治体で色々メニューは用意し始めているが、まだまだ市民に遠い)
・父親の育児休暇が保障されていて、ほとんど全員が取っている
 (⇔取得率1%未満=ゼロというのが現状、社会の風土が育っていない)
・出産後の女性のほとんどが仕事を始められる環境がある
 (⇔来年からマザーハローワークができるが、保育園が満杯では仕事に就けない)
・どんなに小さくても子どもの意思が尊重されるゆとりのある教育方針
 (⇔どこへ向かっているのか全く見えない、子どもを翻弄するだけの日本の教育)

 ほかにも色々ありますが、とにかく社会全体が子どもを中心に回っているといっても過言ではないくらい、幸せな国なのです。このような社会的なシステムが成り立つ背景には、人々が愛おしいと思うものは愛おしく、尊重すべきものは尊重するという誰もが共通して、または人間本来が持っている意識や考え方、地域の伝統や習慣といったものを制度という形で保障したに過ぎないということが分かります、そして、この無理のない制度が、人々の心に余裕を生み出し、さらに「平ら」度合いが増すという好循環がこの国にはあります。
 私もベビーカーを押す生活をがやってきて、初めて日本の環境の未熟さに気付きました。子どもや高齢者、障害者など社会的な弱者の扱いによってその国のレベルが分かると、別の本で読んだことがありますが、この本を読むと日本はまだまだ後進国なんだなあということを改めて認識させられます。

※ただし、デンマークの税金は高い。消費税25%、所得税約46%、新車購入時には180%もの高い税金が課せられているのも実状です。

 
(2005.11.24/櫻井高志)