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スーパーおやじの痛快まちづくり/安井潤一郎著

講談社/1999.8.26

 商店街が関わるとこんなおもしろいまちづくりができるのか…。
 商店街の活力がなくなり、どこのまちでも中心市街地の活性化が大きくとりあげられている時だけに、この早稲田商店会のまちづくりと一体となった取り組みは新鮮で、これからの地域と商店街のあり方に大きな示唆を与えてくれる。

それは不純な動機から始まったという。早稲田という町は大学城下町ともいうべきところで、夏になると3万人の学生が一斉に町から消えてしまい、その夏枯れ対策を兼ねて何かイベントでもやろうというのがきっかけ。最初からまちづくりというものを大上段に構えずに、あくまでも商売人として何か儲かる事はないかと考え、その結果がエコサマー・フェスティバルからごみゼロ平常実験、エコステーション、全国リサイクル商店街サミットと大きなまちづくりにつながっているのだ。

 それぞれの話しは、著者が全国を飛び回って講演しているということもあってか非常に面白く書かれている。まちづくりに取り組むことがそれぞれの商店の儲けにもつながり、何よりもやっている人たちが楽しんでやっているのがよい。最初のとりくみだった空き缶回収では景品に商店街で利用できるラッキーチケットを提供。普通のサービスチケットでが利用率が低いが、よいことをした見返りにもらったチケットの利用率は高く、仲間と連れだってきてくれることで客層も広がったという。

 早稲田のまちづくりは地元の人々が“場”を作り、そこに行政、企業、団体、学校などに参加してくるスタイルがあり、これを早稲田ルールと呼んでいる。これまでの市民運動では行政にかみつき、一方の行政はその見幕に恐れをなすということが多かった。また、行政のまちづくりでは平等と公平という視点でもすべてのまちに気を回しすぎるからろくな結果がでないという。役所にはぜひ“やる気のない町”を積み残す勇気をもってほしいという指摘には重みがある。

 NHKの番組でエコサマーやエコ・ステーションが放送されたり、マスコミやインターネットをうまく活用しているのもすごい。早稲田いのちのまちづくり委員会ではホームページによる情報発信を行っている。また、メンバーの中ではメーリングリストによる意見交換も行っており、教科書の再生紙化への取り組みもメーリングリストのアイデアをきっかけに、世界に在住しているメンバーから先進国での取り組みの情報がどんどん集まり、文部大臣への要請行動につながったという。まちづくりにおけるインターネット利用の実践例としても興味深い事例だ。

 スーパーおやじとは「スーパーのおやじ」ということだろうが、そこにはSUPERおやじという意味合いも込められていそうだ。楽しくて儲かるまちづくり。これからのキーワードの1つだ。

(1999.9.14/石田富男)