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セーラが町にやってきた/清野由美 著

プレジデント社/2002.12発行
 小布施に旅行に行ったのは、3年前の五月の連休でした。知り合いの勧めで「蔵部(くらぶ)」という和食レストランで食事をしたのですが、その余りのサービスのよさ、食べ物の美味しさ、インテリアの迫力に正直、戸惑いました。長野の片田舎である小布施にそこまでのセンスの良さはまったく期待していなかったからです。以来、人が小布施へ行くと聞くと、「蔵部」での食事をしつこいほど勧め、そして蔵部で食事をするために、もう一度小布施へ行きたいと思っていました。

 この本は月刊誌「日経ウーマン」が主催する「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2002大賞」を受賞したセーラ・マリ・カミングスのサクセスストーリーということになっていますが、読んでみると、まちづくりの成功例として様々な角度から取り上げられる小布施のまちづくりストーリーの凝縮版となっています。栗菓子で有名な「小布施堂」に1994年にやってきたアメリカ人女性のセーラが、実に破天荒なやりかた(実は的確な手法)で小布施堂だけでなく、小布施のまちづくりの「仕上げ」をやってのける様子を、ジャーナリストである著者は小気味良く展開していきます。全国に通用するセンスの良さを持つようになっていた観光地小布施を一気に世界に通用するセンスに押し上げ、まさに私が魅せられた「蔵部」を作り出したのが彼女であると知り、ここ数年の謎が解けた思いでした。カルロス・ゴーンはあの役職を与えられたからこそ、改革者となったけれど、一社員としてニッサンに来ていたら「ただの変な外人」に過ぎなかった。セーラもまたそういったキャラクターの持ち主で、偉業をなしとげた彼女にはもちろん、「変な外人」では終わらせずに、セーラという逸材を生かしきった小布施の人々の心意気に拍手を贈りたいと思います。
(2003.10.30/竹内 郁)