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人生の教科書[ロボットと生きる]/藤原和博・東島和子・門田和雄 著

筑摩書房/2003年7月出版

 本書の冒頭には、この本は理科離れを食い止めるための"新しい理科の教科書"だという内容の宣言がある。そして、物理、化学、生物、地学といった理科的分野をカバーしつつも、身近な題材である「ロボット」を取り上げ、そこから科学や技術が学べるように編集をしたと書かれている。

 「ロボット」が身近な存在であるということに疑問を抱く方も多いと思われる。しかしこの本を読んでいただくと自分の身の回りにいかに多くの「ロボット」が存在しているかが理解できる。例えば、いまどきの全自動洗濯機は、すすいで、乾燥までしてくれ、さらにやたらと喋るものもあり、人の形はしていないものの"洗濯クン"という名の「ロボット」である。そして、科学や技術はさらに進み、SFや漫画・アニメに登場するような「ロボット」と人間が共生する世の中が確実に到来することが納得できる。

 からくり人形、回転寿司を握る寿司ロボット、医療用ロボットや人間型ロボットなど過去・現在・未来の様々な「ロボット」について紹介しながらも、話は「ロボット」だけにはとどまっていない。例えば、寿司ロボットの紹介では、"世界に輸出されるSUSHI"や"寿司からわかる漁業資源や環境問題"について書かれている。また、失業や生きがいの喪失、技術のブラックボックス化など"ロボットがもたらす負の問題"もきちんと取り上げていて、題名の中に教科書という言葉が入っているのもうなずける。

 この本では「ロボット」と人間の関係が常に書かれている。「ロボット」が試行錯誤の繰り返しで開発され、研究を突き詰めていくと人間の研究につながること、ロボット創りを通じて高校生が知識や技能だけでなく仲間と一緒に活動する楽しさと苦しさも学ぶことを紹介している。それを"ロボット創りは人創り、そして人間を知ること"とまとめている。

 「まちづくりはひとづくり」という言葉があり、ロボット創りとまちづくりに共通点があるとすると、まちづくりは「ひと」を知ることから始めるべきなのではないか。

(2003.12.15/山崎 崇)