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みえない道路 建築基準法 二項道路/土岐悦康著
創英社/2015年5月12日発行

 最近、とある土地に接道する道路について、二項道路、いわゆるみなし道路かどうかの話題が出たため、二項道路に関する資料の一つとして本書を手にした。
 改めて「二項道路」は、「この章の規定が適用されるに至った際現に建築物が立ち並んでいる幅員4.0m未満1.8m以上の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線から水平距離2.0mの線をその道路の境界線とみなす。(本書より)」で、本書のタイトルにもある”みえない道路”である。この二項道路の認定を受けると道路の中心線から2.0m壁面後退が必要となり、敷地(私権)の一部が割愛されるため、認定適否について問題が生じ、係争事案も少なくはない。逆に、1.8m未満であればみなし道路でもないから、この規定には該当せず壁面後退も不要となる。
 本書では、過去の住宅・土地調査の結果から4.0m未満道路接道世帯状況や人口密度との関係性を示し改善動向を示す一方で、判例からみた二項道路問題(認定、取扱問題)が提示されている。

  1. 一括指定の処分性問題 法施行当時、包括的に一括して一定の要件を満たした道路を二項道路とする定めにより生じてきた弊害
  2. 交通要件問題 一般交通に供していない場合の「通路」か「道(道路)」かの判断
  3. 建築物連坦要件問題 建物が立ち並んでいるは沿道建物が二戸かそれ以上の連坦が必要か
  4. 中心線判定問題 特定行政庁が指定する二項道路認定の境界幅員1.8m(中心線)の捉え方によりその公平性が保たれているか
  5. 基準時問題 認定基準時(都市計画区域が定められた時点)で包括的に二項道路が認定されているが、その時点が異なることで生じてきた弊害

 二項道路問題は、権利者や地域住民、行政の問題でもあり、当事者間が協力し関わらないと解消のみちはひらかれない。その方策には、狭隘道路拡幅整備事業、面的整備となる市街地再開発事業のほか、密集市街地整備や防災まちづくりも関係し、都市計画的な手法、政策により進められているが、どれも時間のかかる話であり、地道な対応にならざるを得ない。
 狭隘道路に連なる長屋がつくりだすほどよい距離感のある生活空間は情緒ある風景だが、高齢社会、人口減少による空家問題が深刻化することは建物更新がされず、二項道路問題もそのままになる。
 今回発端となった土地もいきつくところは二項道路か否かの認定がカギで、幅員1.8mが境となるが立会測量がなくとも公図か現地測量で、という曖昧さ。これまであまり意識してこなかった二項道路だが、私権とまちづくりの狭間で改めて難しい問題であると感じた。

(2015.9.16/村井亮治)