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日本人の住まい方を愛しなさい/山口昌伴 著

王国社/2002年9月出版
  「日本人の住まい方を愛しなさい」というタイトルには、世界各国の住まい方や土間があった頃の日本の住まい方と比較して、住まい方や生き方を愛していない現代の日本人を指摘し、「ここ100年がかりで、奇妙な欧米型を創出してきたが、もうそろそろ日本人の身の丈に合った、日本型を追求すべきではないか」という想いがこめられている。いくつか指摘されている問題のうち2つを紹介したい。

 1つは1人1日あたり200リットルにもなるという生活排水の量の多さである。水道管を分岐し台所流しの上にも蛇口がつくようになり、水を溜めて使うのではなく流して使うようになり、結果として水質の悪化や水不足の問題を引き起こすことになったのである。

 もうひとつは包装ゴミや生ゴミの問題である。以前なら工夫して調理されていた大根の葉や牛蒡の皮が調理クズとして捨てられている。さらには手付かずの食品が生ゴミとして捨てられているという調査結果もある。その元凶を冷蔵庫への誤解と考え、「今どきの仕舞い込み用冷蔵倉庫は、すぐ食べれば新鮮で美味しい食品を、古びさせ、マズくしてから食べる器械、になっている」と述べている。

 また、これらの問題を放置した場合の結果をSF風に想像したことが以下のように述べてられている。食料自給率の回復のため食料をゴミにする冷蔵庫は禁止された。水道水の使用を制限するため流しの上などに蛇口を設置することが禁止され、当然、水洗便所も禁止された。冷蔵庫メーカーはオマルの中の便を急速冷凍脱水しフリーズドライ便にする技術を開発して活路を拓いた。フリーズドライ便は、当初燃えるゴミとして放棄されていたが、その後食品として再利用されることになった。

 能率、便利、合理などを求めていたために失ってしまった住まい方、追求すべき日本型台所、住まい方について考えさせられる一冊であると思う。
(2005.8.17/山崎 崇)