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まちづくりの極意−生涯学習まちづくり二十年とこれから/榛村純一編著

ぎょうせい/1998.8.1発行

 掛川市の市長として様々な先進的まちづくりに取り組んできた榛村氏の23冊目の本。この本の中でも「著書の数では日本一」とし、日本の政治家が著作を持たないことを日本の政治の限界や政治思想の底の浅さを示していると言い切っているが、著作を通じて、自分の信念を世に問い、様々な情報発信をしてきた著者だからこそ言える言葉だろう。これまでの著作でも、様々なことを教えられたが、この本では「まちづくりの秘訣」と題し、榛村氏のまちづくりのノウハウが盛りだくさん語られるとともに、国から出向してきた歴代助役6名の論評が展開されている。

 人口7万人余りの市で、全国から注目される様々なまちづくりが行われたことに驚くが、その中でも新幹線新駅設置にあたって1戸あたり平均10万円の募金を集めたという話しは多くの人が感心するところだ。裏話として「もし新幹線の駅を1人の力で造れるとしたらいくら出すか」と問いかけ、「1人の力でできるとしたら百万や二百万出しても頑張る」という答えを引きだし、「そんなに頑張らなくてもよいから、みんなで十万から五十万くらいだしてほしい」と頼んだという。こんな話術のうまさが募金を引きだしたともいえる。

 国からの助役出向の話しも興味深い。地方分権の騎手といわれており、国からの出向とは無縁かと思いきや、地方都市がしっかりするために、技術的判断力や政策情報通のキャリア官僚が、そのまちに出かけて一定期間マネージするという地方分権のための人材派遣が大切であるという。

 榛村氏が市長になったいきさつをいくつも運が重なったとし、そのまちづくりの成果も自分だからできたと自慢するわけでもなく、素直に分析している。多選という批判を受けつつも、掛川市のまちづくりにずっとこだわってきた姿勢は、首長から国会に転身する人も多い中で賞賛されるべきであろう。課題は助役の1人もコメントしているが、榛村氏に続く人材をいかに育成していくかである。その点にも注目していきたいと思う。

(1998.9.21/石田富男)