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まちづくりの法律がわかる本/坂和章平著

学芸出版社/2017年5月26日発行

 まちづくりに関する法律の解説書籍は世に数多く出版されており、本書もその中の一冊ではあるが、業務を通してお世話になった方が出版されたもので、今回手にする機会に恵まれた。
 本書でとりあげているのは、主に都市計画法であるが、制定後今日に至る間に何度かの改正を経てきたが、その過去の変遷を交え、関係する法律とも関連づけながら解説している。 法律の解説は、その情報量が膨大で複雑な内容になりがちだが、本書は、全体の法体系を踏まえ要点だけをコンパクトにまとめられている。まちづくりの教科書を初めて手にする場面より、いくつかの要点を素早く確認し、まちづくりに生かす場面によくあう内容となっている。
 この解説書の著者は、まちづくりの分野に精通し特に市街地再開発事業での争い案件に多く関わり、その分野を専門としている数少ない弁護士で、都市再開発法ではなく、そもそものまちづくり法、都市計画法に着目し、弁護士としての経験に基づく視点、要約によりまとめられた解説書となっている。なお、著書はこの他にも市街地再開発再開発事業に関する書籍も多く出版されている。
 本書は法律の解説書ではあるが、その紹介方法に特徴があり、戦後の日本が歩んできた復興、高度成長、バブルとその崩壊、二度に亘る大震災、目まぐるしい政権交代など、今の法律がどういった時代背景の中で誕生し、また改正され、そしてどう活用されてきたかを交え解説している。法律が制定された時代をひも解くことで、法律の目的や体系などを改めて考えるきっかけにもなる。
 一方で、現在まちづくりの分野が抱えている問題、人口減少、災害復興、コンパクトシティなどへ対応したまちづくりの在り方にも触れ、特に都市再生特別措置法による新たな枠組みの中ですすめられていく都市再生への展開に着目し、その効果などを検証している。
 一般的な解説書の要素とともに、歴史背景や将来展望を踏まえた独自の解説方法などは、法律に纏わるものの本としては興味深い一冊であった。

 (2017.5.23/村井亮治)