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これから価値が上がる住宅地 八つの発想の転換 /齊藤広子著

学芸出版社/2005.2.25発行

 著者の齊藤氏はマンション管理研究で博士号を取得されてすぐに着任したのが、マンションのない山のふもとの岐阜の大学で、何を研究すべきかと悩んでいた時に桜ヶ丘住宅という魅力的な住宅地に出会ったことが戸建住宅地研究のきっかけだったという。マンション管理のノウハウが良好な住環境をマネジメントする方法として適用できると思いいたったことが、興味深い研究を生み出した。著者がマンションの多い大都市の大学に赴任されていたら、このような研究がされなかったかもしれないと思うと、名古屋圏での生活が本書を生んだともいえるだろう。

 著者は本書の前に「コモンでつくる住まい・まち・人」(彰国社)という興味深い著書を発表されているが、そこで紹介された魅力的な住宅地をわかりやすく解説するとともに、8つの発想の転換として、常識として思われていたことに対し、再考をうながし、全国の魅力的な住宅地の事例を紹介することでそれを証明してくれる。文章が読みやすく、全体のボリュームも多くないので、本を読み慣れていない人でも気軽に読めそうだ。
 以下の8つの点について、1つでも「そう思う」と思った人は、本書を手にとってみてほしい。見方を変えると、新しい価値が見えてくるだろう。
(1)道は幅広く直線がよい。
(2)庭は広いほうがよい。
(3)頑丈な高い塀を持つ家が立派な家である。
(4)私道に接している家は、不動産の評価が低い。
(5)借地で住んでいると、不安である。
(6)法律で決まっているよりも、もっと厳しいルールがあるところは、住みにくいし、住宅を売りにくい。
(7)マンションのような、管理組合とはわずらわしいものである。
(8)古い住宅には魅力がない。価値もない。

PS.図書紹介を書こうとしてはじめたが、本書の「はじめに」の文章が本書の内容を端的に示しており、これ以上の解説文はないと感じた。その点でも本書は非常にわかりやすく、親切な本だ。多くの人が本書を読むことで、こんな魅力的な住宅が全国で生み出されていくことを期待したい。

(2005.5.13/石田富男)