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バリアフリーと地下空間/後藤惠之輔・森正 著

電気書院/2007.8

  名古屋は地下街のまち。「迷路みたい」とよく言われ、訪れれば一度は必ず迷う場所。この迷路性が魅力だという声もあるが、バリアフリーの点からみると、致命的だろう。もともと建設された時期も主体もバラバラなため、段差などのハード面から、サインなどのソフト面まで、バリアだらけである。多くの人がなんとかならないかと感じられていると思うが、私も同様、そう感じていたところに見つけた本だった。
 この本は、著者の2名が実際に障害者であり、その目線から書かれている。地下空間を対象に選んだのは、名古屋もそうであるように、地下空間自体がバリアであり、かつそれらが凝縮された場所であるため、その解決が他へのモデルケースになりうるだろうと考えたからである。地下空間というわかりやすいバリアを題材にして、幅広くバリアフリーやユニバーサルデザインへの理解を深めてほしいというのが目的だ。具体例も豊富で、全国各地の地下街について、実地調査を行い、問題点を列挙し、具体的な対策を紹介している。名古屋では、エスカとテルミナがとり上げられているが、結構細かいところまで見られ、厳しい(?)指摘を受けている。また、防災面にも言及している。地下の耐震性は優れているものの、近々起こると言われている大地震を、地下街で、かつ障害者という立場で遭遇したら?そしてパニックに巻き込まれたら?と、そんなことまで想像させられてしまった。
 名古屋のまちの魅力をより高めていくためは、地下空間を避けては通れない。地下を見つめることで、また違った地上のまちづくりも見えてくるかもしれない。それから、バリアは目に見えるもの以外にも、意識や認識の問題もあるので、それらも含め、今後またじっくり考えていきたい。
 以下は、蛇足だが、先日行ったとある観光地のお店で、「お子様(赤ちゃん)を抱いたお客様にはご遠慮いただいております。」との言葉を店員からかけられた。最初意味がわからなかったが、要は「出ていけ」とのこと。通路の幅が狭く、子どもの足が商品にぶつかって壊されることを怖れてらしい。商品が大事、また子どもの行動が予測不可能なのはわかる。が、子どもを抱いて入れないということは、ベビーカーや車イスでも当然入れないということ。バリアフリーの意識があれば、違った店づくりもできたのではないだろうか。店の中の移動についても、是非バリアフリーに心掛けてほしいものである。

(2009.5.11/櫻井高志)