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明日の田園都市/E・ハワード 著 長素連 訳

鹿島出版会/1968.7発行

 世界の都市計画に多大な影響を及ぼした本書であるが、実際に多くの人に読まれているのだろうか?日本で「田園都市」というと、田園調布のように、いわゆる緑豊かなベッドタウンをイメージするが、本書を読むと、ハワードが提案した都市の姿はベッドタウンとは全く異なるものだということがわかる。

 自然の美しさや低家賃といった農村のよいところと、社会的機会や娯楽、雇用機会の多さといった都市のよいところをドッキングさせようというのが田園都市の考え方であるが、働く場、買い物する場などを備えた自立した都市であるという意味で、ベッドタウンとは反対の概念である。そしてハワードの素晴らしいところは、そのような都市を実現するために必要な「仕組み」を詳細に検討したことであり、その仕組みとは、公共的な役割を担うセクターが土地を一元的に所有することで、土地利用をコントロールしようというものであった。ハワードの田園都市の理念にもとづいて建設されたレッチワースでは、実際、田園都市会社が土地を取得して運営を行っている。

 日本では、土地は個人や企業が私的に所有するのが一般的であり、個人の利益と公共の利益が反する場合にはトラブルが生じている。本書で提案されているように、土地の個人所有を認めないという方法も、都市をコントロールするためのひとつの方法として考えてみるに値すると思う。

 (2006.8.20/伊藤 彩子)