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「100円商店街・バル・まちゼミ」/長坂泰之 編著 

学芸出版社/2012年12月1日発行

  「三種の神器」 歴代天皇に伝わる元祖から、高度経済成長時代の白物家電、近年ではデジタル家電に称される言葉だがまちづくりの分野における三種の神器とは何か。本書では、「100円商店街、バル、まちゼミ」の3種類の事業を称している(適否かどうかは読者の判断に委ねる)。これらの事業は、既に10年近く前から衰退商店街等の活性化策として全国で取組まれてきたが、近年、またその活動が見直されてきている。本書は、各事業に携った人々の経験談から、その実態、裏側にふれ、「お店が儲かるまちづくり」として綴り、紹介している。
 各事業の概要は、その名称から容易にイメージできるが、効果的で円滑な運営に必要な法則が考案され、全国的に浸透するきっかけとなった。
 100円商店街は、商店街を100円SHOPにみたて、厳選されユニークな100円商品を店外で陳列し店内で支払わせ、店内商品のついで買いにつなげる。出店のしやすさ、話題性等から進化してきた。バルは、飲み歩き飲食店の店主同士のコラボメニューや客同士の出会い空間を創出し、期間後も余ったチケットを金券として利用可能にして来店機会を失わせない工夫も。まちゼミは岡崎が発祥とされ、店主を講師にマニアックでホンモノの情報を伝えるが、懲りすぎて応募者が0とならないよう、テーマやタイトルを工夫する。どれも店主や事務局の実践と反省、試行錯誤があって今の成長、全国的な拡大につながっている。
 どの事業も、まち中、リアル店舗を舞台に、人と人との接点を作りだすきっかけにすぎないが、今の時代は、そのきっかけすら希薄になってきた。この三種の神器は、お店、地域、所属の垣根を越えた人々とのつながりを追求した結果、緩やかに浸透し、実践した地域ではその効果を実感し、回を重ね充実してきている。
 まちゼミの紹介を読みながら、十数年前、大須の老舗コーヒー店でみたコーヒー教室を思いだした。社長自ら美味しいコーヒーの淹れ方を伝える教室で、豆の種類から挽き具合、ドリップの方法など、柔らかい口調で語り、その場でスマートに実践してくれる。今のまちゼミの先駆けでもあった。
 三種の神器は、時代の流れとともに移り変わってきたが、地方創生元年と称される2015年、このまちづくりの三種の神器の好機となるのではないだろうか。いつか、機会があれば三種の神器を体感してみたい。

(2015.2.5/村井亮治)