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 リュブリアーナ(スロベニア共和国の首都)

  今回、スロベニアとクロアチアを訪問することができた。一般的には地理的にどの位置にあるのかは知られていない。1943年に6つの社会主義共和国(マケドニア、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、スロベニア、モンテネグロ)がユーゴスラビア社会主義連邦共和国を構成したが、1992年に6つのうち4つが独立し、残り二つ(セルビアとモンテネグロ)でユーゴスラビア連合共和国をつくる。2003年に国家再編ののち、この二つも2007年に独立して、6つの新しい国家が形成された。その初期の独立を勝ち取ったのがスロベニアである。そして、スロベニアの首都がリュブリアーナである。
 スロベニアは独立に際し、セルビアを中心とするユーゴスラビア連合軍と戦った。しかし、クロアチアも同時に独立宣言したため、地理的に手前にあるクロアチア対応に追われ、スロベニアまで手が回らなかったことから、短期で決着ついた。これを十日間戦争と言う。
 スロベニアの人口は200万人強、首都リュブリアーナは30万人弱。国全体の人口は名古屋市230万人よりも少なく、面積では名古屋市の10倍弱の国である。スロベニアは旧ユーゴスラビアの北端にあり、オーストリア、イタリア、ハンガリーに接する。インフラが戦火に遭わなかったため、経済は比較的順調に伸びてきた。2004年にEU加盟、2007年にユーロ圏に加わる。しかし課題は、港湾や鉄道貨物のインフラが公営企業であるため、インフラが不十分のままで、成長余地があるにもかかわらず(後背地にオーストリア・ハンガリー・ポーランドの工業地がある)、成長を妨げていることにある。
 首都リュブリアーナは世界遺産の都市ではない。地震国でもあり、1895年にはマグニチュード6.1の震災に見舞われ、当時の10%にあたる1,400の建物が破壊された。市のシンボルであるリュブリアーナ城も被害を受け、復元しようとしたが、あまりにも住宅不足であったため、避難所に改造されて500人がこの城で暮らした。それは1964年まで続いた。震災後はウィーン分離派様式により再建が行われたため、どこでもその様式を目にすることができる。
 市街地はリュブリアニツァ川の北と南で分けられ、北は新市街地、南は旧市街地である。新市街地には国会議事堂や美術館、博物館等の文化施設が集積し、他方南側は市役所や城、大聖堂が古い街並みとともに残る。新市街地と旧市街地とは三本橋で結ばれている。これはウィーン分離派のヨジェ・プレチュニクの作品であり、建築物も多く残されている。彼はオットー・ワーグナに師事した。建築物では国立大学図書館や国会議事堂の作品がある。
 旧市街地のメインストリートはモール化され、歩行者が安心して歩き、飲食できる環境を確保している。至る所にカフェテラスが設置され、あるいは物販用屋台が一定ゾーンに配置されている。川に沿った道は川と同様に緩やかにカーブして、視点場を変えていく心地よさはいい。川そのものは奇麗なものでないが、観光船が航行し、水辺が憩い感を演出している。ここでも他のヨーロッパ都市と同様に建物内にパサージュ(通路)を、道路と道路を結ぶ、あるいは中心の庭へアクセスできるように配されている。新市街地も近代的ビルが建つが、道路インフラも広がり、歩道も広くとられているので、ここでも当然のごとくカフェテラスは設置されている。
古い町並み、緩やかにカーブするモール、そこに置かれたカフェテラス、人の行き来を容易にし、時に驚きを提供するパサージュ、そして常に流れる川、シンボルとして目立つ城や大聖堂、ところどころに人々が集える大規模公園、物価も安く(感覚的に日本の1/2か)、居住地としても観光地としても落ち着いた都市である。
二度と来ないかなと思いつつ、2万歩を歩き続けたリュブリアーナであった。

市街地地図
市街地の地図 茶色の建物が古い建造物

城の全体像 リュブリアーナ城の塔から城の全体像を見る
市街地の眺望
リュブリアーナ城の塔から市街地を眺望する
町並み
旧市街地の町並み。緩やかにカーブする景観がいい。
観光船
リュブリアニッツァ川を航行する観光船
三本橋
リュブリアニッツァ川にかかる三本橋
カフェ
カフェテラス(1)
カフェ
カフェテラス(2)
カフェ カフェテラス(3)
カフェ
両サイドカフェテラス
パサージュ
パサージュ(1)
パサージュ
パサージュ(2)
パサージュ
中庭に導くパサージュ
朝市
土曜日ににぎわう朝市
屋台ゾーン
物販用屋台ゾーン
子ども
愛想のいい子供。ポーズをとってくれた。
プランター
ちょっとしたアイデア 長靴のプランター
イベント
823 独立記念日のイベントで
国立大学図書館
建築家プレチュニクの国立大学図書館
国会議事堂
建築家プレチュニクの国会議事堂
分離派建築
分離派様式の建築(1)
分離派建築
分離派様式の建築(2)
分離派建築
分離派様式の建築?
マクドナルド
市内唯一のマクドナルド(新市街地)
レンタサイクル
807 レンタサイクルも充実
(2017.7.4/井澤知旦)