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富山ライトレール「ポートラム」と岩瀬地区のまちづくり
 先日、富山市を訪問し富山ライトレール「ポートラム」に乗車する機会に恵まれた。2006年4月の開業時には全国から多くの視察者と鉄道ファンが訪れたようである。2008年11月の金曜日の夕方に乗車したが、地元利用客と同程度の視察者と思われる人々が乗車しており、開業後2年以上経過してもなお注目度は高いようである。
 ポートラムはJR富山駅の北側にある富山北電停から富山湾近くの岩瀬浜電停までの約7.6kmを約25分で結ぶ。富山北電停から約1.1kmの区間は道路との併用軌道を新設し、残りの約6.5kmはJR富山港線の線路を活用している。車両の外観は「チンチン電車」と呼ばれる従来の路面電車とは大きく異なり、ヨーロッパの各都市で運行されているような近未来的なデザインではあるが、2両編成であるために愛嬌も感じた。車幅が狭いために座席数が少なかったり、一部が1.5人掛けの座席になっていたりというマイナス面もあるが、大きなガラスが使われているため車内からの眺めも良く、快適な空間であると感じた。従来の富山港線と比較して、運行時間の大幅な増加や運行時間帯の拡大などの改善が行われた。早朝夜間を除き15分間隔の運行、終電は富山北23時15分発であるので日常的にも十分使いたいと思える交通システムである。また、蓮町と岩瀬浜の2つの電停ではフィーダーバスと呼ばれる路線バスが接続しており、同じホームで乗換えが可能である。
 終点である岩瀬浜電停に着き、岩瀬地区を1時間ほど歩いた。岩瀬地区は江戸時代から回船問屋で栄えた地域で、明治六年の大火で大半の家屋が焼失したものの、その頃全盛を迎えていた回船問屋をはじめとした財力により再建された。しかし、回船問屋の事業が衰退するとともにまちも活気を失っていった。2001年頃からまちの再生に積極的に取り組んでいるのが地元の老舗造り酒屋「桝田酒造店」やその社長が中心になって設立した岩瀬まちづくり株式会社である。空き家やその土地を購入し、修景した後に売却または賃貸するという先祖代々からの信頼関係があるからこそ可能になる事業手法で、次々と町並み修景を進めている。実際の修景作業は市内にある大工と庭師の専門学校「職藝学院」の生徒や卒業生を中心に行われている。また、街並み修景等整備事業補助制度などにより、伝統的家屋の修景費用だけではなく、活性化のために空き家を店舗や飲食店に修繕する費用などを助成することで、富山市も岩瀬地区のまちづくりを積極的に支援している。まち歩きで時間が許せばぜひ訪れてもらいたいのが、一般公開されている国指定重要文化財「森家」である。名物館長の説明を聞けば、いかに岩瀬が回船問屋とともに歩んできたのかが理解できるお勧めの場所である。
 全国各地の都市で見直されつつある路面電車の復活を逸早く遂げた要因には北陸新幹線の開業に伴う連続立体交差事業に関する補助だけではなく、コンパクトシティ実現に向けた富山市の積極的な取り組みにあるのだと思う。岩瀬地区のまちづくりに対しても地区と協働して取り組む姿勢が感じられ、富山市民が羨ましく感じた。駅の南側の中心市街地を走る路面電車は来年2009年12月の運行を目標に環状線化事業が進められている。また、2014年度に予定される北陸新幹線開通時には富山駅付近の高架化が行われ、環状線化が完了した路面電車とポートラムが接続する計画がある。富山市の今後の動きに注目していきたい。
富山北電停とポートラム

修復中の森家土蔵
老舗造り酒屋「桝田酒造店」
  (2008.12.8/山崎 崇)