現在の位置:TOP>まちづくりを学ぼう>視察レポート>六本木アート・トライアングル WWW を検索 スペーシアサイト を検索

 

六本木アート・トライアングル
 東京の新しいアートの拠点として、六本ヒルズの森美術館、国立新美術館、東京ミッドタウンのサントリー美術館を結ぶ「六本木アート・トライアングル」が完成し注目を浴びている。都市の中で美術鑑賞をより身近なものにしようという狙いから、さまざまな配慮がされている。例えば、閉館時間は遅く、新美術館、サントリー美術館は20:00まで、森美術館は22:00までやっているため、会社帰りに立ち寄ることができる。(時間は事前にご確認下さい。)また、どれもショップや飲食店と共存しており、美術鑑賞だけの楽しみを提供する施設ではない。
 3館それぞれの特徴としては、まず、森美術館と新美術館は収蔵作品を持たない美術館であるということがあげられる。都心の一等地にある施設では、収蔵作品の倉庫スペースを削り、ミュージアムショップやレストランを充実させると共に、集客力のある展示会を数多く開催していくという方針は必然であろう。その結果、建築としては美術館というよりフレキシブルな展示空間としての要求をどれだけ満たすかが、大きなコンセプトとなっている。新美術館はそうした意味では最先端の美術館である。各展示室にはそれぞれ専用のトラックバース、荷解き室、作品整理室、搬入EVが備えられており、展示品をいかにスピーディに搬入し、展示、撤収できるかに特化している。私が訪れた日は平日であったが、印象派のモネが開催されており、とんでもない混雑であった。展示室前には入場制限の列ができ定期的に入場者が補充される。そして、芋洗い状態の展示室を抜けると最後に巨大なミュージアムショップにたどり着くという一連の流れは、ある意味この美術館のシステマチックな展示会開催の流れを連想させた。作品の搬入も戦い、見るのも戦い、レストランで食事をするもの順番待ちの戦いと、まさに「戦う美術館」であった。この美術館へ行くのは臨戦態勢で望む心構えが必要である。
 さて、同じ展示室としての森美術館は、オープン時の混雑も終わり、そこまで臨戦態勢で望む必要はない。というより、この美術館は展望台の入場料も一緒になっているので、私のイメージとしては「展望美術館」である。私のような地方から来た人にはうってつけの美術館で、昔のテレビ塔の展望台を思い起こさせる懐かしさすら感じた。ちなみに当日はコルビュジエ展をやっていた。平日の22:00頃にもかかわらず、多くの来館者があり、建築もメジャーになったなあと思った。
 最後のサントリー美術館は建築的な展示空間として見所のある美術館である。東京ミッドタウンのコンセプトが「和風」ということであるそうだが、唯一「和」を感じる建物であった。東京ミッドタウンでは内外に「竹かご」をイメージしたというルーバーによる装飾が施されているが、この美術館のルーバーは線が細く繊細に仕上げられている。室内のものは桐を使用し素材のやわらかさが感じられる。屋上には茶室が設けられ、茶会も開催されるそうである。展示室の吹抜け空間には休憩スペースがあり、外の緑を眺めながら一息つくことができる。展示も美術館所蔵の日本美術を中心にさまざまな切り口での企画を立てており、感想としては、「大人の隠れ家的美術館」であった。
 アート・トライアングルということで、3箇所を回るマップも発行されているが、1日ではとても、見切れる量ではない。新美術館では、いくつも展示会を開催しており、本気で見るとそれだけで1日かかる。また、森美術館と新美術館では一方の半券で、もう一方の入場料が割引になるが、サントリー美術館ではそうしたサービスがなかった。今後、3館共通券やスタンプカードなどの、面白いサービスが出てくることを期待する。今のままでは近くにあるからトライアングルにしてみましたという感じである。

大混雑の国立新美術館

美しいルーバーのサントリー美術館

六本木ヒルズ展望台からの夜景

  (2007.7.20/堀内 研自)