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奈良市ならまち界隈を歩く
  先月、私用で奈良を訪れる機会があった。その際に立ち寄った「ならまち」界隈で得た雑感をレポートしたい。ならまちは、奈良公園の西隣、近鉄奈良駅の東南に位置し、江戸時代末期から明治時代にかけての昔ながらの落ち着いた町並みと路地が残るとともに、ヒューマンスケールの商店街を有したとても親しみの湧く場所である。近年は、観光ガイドにもとり上げられ、町並みを歩く観光客も多くなっているようで、私もそれに漏れず、町を眺め、買い物や食事を楽しんできたのである。

 ならまちの町並みは、昔ながらの格子戸がかかった町家が点在し、またそれをアレンジした個人店や料理店などが並ぶとともに、神社・仏閣も結構多く、東大寺や興福寺に負けず劣らず、古都奈良を感じさせてくれる歴史的な古さと趣きのある所であった。まちの通りも非常に狭く、車が通れても1台がやっとという広さの路地であまり車が通らず、またそれに地図がないと迷ってしまうほど入り組んでいて、曲がり角が来る度にその先への期待感を抱かせてくれる面白さがあった。おまけに、塀の上や玄関脇には猫がいたりして、この路地と猫という組み合わせが、ますます親しみを膨らませてくれるのであった。

 また、ならまちから近鉄奈良駅へと北に伸びる商店街もよかった。狭いうえに、人通りも多い。名古屋の大須をもう少しこぢんまりとさせた感じだが、雑然さとごみごみ具合が賑わいを感じさせてくれた。通りを歩いているだけで、店の中でのやりとりが感じられるような商店との近さがとても印象的だった。

 ならまち界隈の、歴史的な町並みと現代の普通の商店街を見て歩いたのだが、そのどちらも通りの狭さや建物の密集度、そしてそこに暮らす人々の活動の濃さが相まって、裏町的な居心地のよさと、行き交う人に距離感を感じさせない親しみ易さを提供してくれているのだと思った。奈良の都心にあり、しかも奈良公園、東大寺、興福寺といった奈良を代表する巨大観光地に隣接し、幹線道路に囲まれた環境の中で、このような歩いて楽しめるまちが残されていたのは、新鮮な発見であった。しかし、今回期待して久し振りに行った奈良だったのだが、「古都奈良」と言うものの、それを感じさせる場所が社寺などの観光地から一歩外へ出ると、ほとんど感じられなかったのは、少々残念でもあった。古都奈良と呼ぶのなら、駅前や幹線道路沿いなど普通の街並みへの配慮がもう少しあってもいいのではと感じてしまった。パーツではなくトータルで歴史を感じられる奈良になってくれるのを期待したい。

 
ならまちの町並みならまちの町並み
町家を改装して、イベント開催などをしている奈良町物語館町家を改装して、イベント開催などをしている奈良町物語館
まちなかの狭い路地まちなかの狭い路地
塀の隙間から様子を伺う猫達塀の隙間から様子を伺う猫達
商店街(もちいどの通り)商店街(もちいどの通り)
 (2007.6.11/櫻井 高志)