現在の位置:TOP>まちづくりを学ぼう>視察レポート>城崎温泉 WWW を検索 スペーシアサイト を検索

 

城崎温泉
 城崎温泉は1400年の歴史がある古くからの温泉街で、一羽のコウノトリが足の傷を癒したことから発見されたという伝説が残っている。小説家の志賀直哉が生涯に10数度訪れ、代表作「城の崎にて」の舞台となったことでも知られている。兵庫県北部の但馬地方にあるが、同じ兵庫県でも神戸をはじめとする瀬戸内海沿いの都市とは違って、山あいの中にぽつんとあるイメージである。自動車を10分程度走らせれば日本海に出られ、さらに1時間走らせれば、東は日本三景の一つである天橋立(京都府)、西は山陰地方の鳥取がある。大都市から離れているためアクセスは決してよいとはいえないが、それでも年間90万人の観光客を集める。

 城崎温泉には大きな旅館があまりなく、3階程度の高さで建物が揃っている。7箇所の外湯巡りがこの温泉のメインで、宿泊客は旅館のフロントにある外湯の入浴券を利用すれば、無料でいろんな外湯を楽しむことができる。外湯や旅館の周りには土産物店だけでなく、手動のパチンコ・ライフルなど昭和を思い出す遊技場、日本海でとれる海の幸が並ぶ鮮魚店、今風のクレープ・ソフトクリームなどのテイクアウトショップから本格的なすし屋まで一通りそろっていて、しかもいずれも賑わっている。店舗の多くが1階で入口を嵩上げしている店も少ないので、基本的にはバリアフリーである。ベビーカーでも、今後の観光の主流を占めるシニア層でも、もちろん障害者の方でも利用しやすい。
城崎温泉のもう一つの特徴として、温泉街を歩く旅行者にも演出に一役買ってもらおうということで、浴衣と下駄で出かけることを奨励している。色鮮やかな浴衣を無料で貸し出している旅館もある。城崎温泉の象徴である大谿川両側の柳の並木を、浴衣を着た旅行者がそぞろ歩く姿は、都市に暮らす我々では日頃感じられない非日常を、もっといえば日本らしさを感じさせてくれた。

 一点残念なのが、城崎温泉を象徴する柳の並木の通りは日本海に抜ける県道でもあるため、自動車の往来も多く、事故を起こしそうなシチュエーションに何度も遭遇した。自動車のすれ違いが難しいのにもかかわらず、一方通行の規制がされていないためである。宿泊関連サービスを営む地域の人々にとって、自動車の乗り入れを制限することへの理解が難しいのであろう。

 全国の温泉地では、旅館などの施設が大型化したため、国内外の観光地との競争の中で経営面で苦戦しているが、城崎温泉では施設を大型化することもなく、旅館から店舗までみんなで利益を得るための努力が見られる。その結果、多様な世代のニーズに応えられる温泉地となっている。地域づくりのヒントがゴロゴロしている、そんなところだった。

昭和を感じさせるなつかしの遊技場



外湯の横の神社で行われていた「夏ライブ」



建物の高さに統一感のある駅通り

最も城崎温泉らしい柳の並木と浴衣を着た旅行客

  (2006.12.8/浅野 健)