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武装宗教都市の力強さ
〜今井町の町並み(奈良県橿原市)〜

 第26回全国町並みゼミに参加するために、今井町を訪れた。話には聞いていたのだが、非常に素晴らしい町並みがしっかり保存されていることに驚いた。

 古くは興福寺の荘園で、室町時代の後期にはこの附近に一向宗(浄土真宗)の道場、後の称念寺ができ始め、旧の勢力に何回か焼き払われたものの、文禄検地(1561)頃には現在とほぼ同規模の六町が成立した。周囲に三間の堀、土居を巡らし入り口には九ヶ所の門を構えた武装宗教都市である。天正三年(1575)、織田信長に降伏した後は、自治都市として南大和最大の商業都市として発展した。

 昭和30年頃に町並みを守る運動がはじまり、昭和40年代には全国的な流れの中で今井町にも住民組織が結成された。昭和50〜60年代には住民と行政が一体となって調査や話し合いを重ねるとともに、建物の修理、修景補助事業や歴史を生かした道路整備を行った。また、地道な活動が認められ、平成5年には重要伝統的建造物群保存地区に選定された。また、歴史的道筋を歴みち事業により整備し、地区内のそれ以外の路線すべてを街なみ環境整備事業の対象とし、現道幅員のまま地道風の舗装としたり、一部で電線の地中化を実施している。また、街なみ環境整備事業を用いて、環濠の景観整備、公園・広場、まちづくり拠点整備、非伝建の建物への修景助成を行っている。

 息の長い活動が続けられてきただけあり、迫力ある美しい町並みが細部まで気を遣って守られている。波型の棧瓦でなく、カマボコのような本瓦で屋根が葺いてある町家が多いのが特徴である。今西家、豊田家などの重要文化財は内部も見学したが、非常に豪華であり、太い梁組に圧倒される。武装宗教都市として成立した町だけあって、町全体から力強さを感じる。

 現在はほとんどが住宅で、観光客のための飲食店などは少なく、静かである。称念寺の向かいには、奥行きの深い建物の中に、小さな店がたくさん入っている「夢ら咲長屋」というところがあり、雑貨や陶器の店などがあった。町家をギャラリーや喫茶店にしているところ、蕎麦などが食べられる茶屋も見られた。空き地を利用して、外観は町家風だが鉄筋コンクリート造の防災施設などもつくられている。

 これだけの町並みを残すためには、さぞかし色々な難局を乗り越えてきたのだと思われる。今回は少し散策した程度なので、町並み保存のための苦労など、詳しい話は聞けなかった。また別の機会に訪れて、住んでいる方の暮らしなどについても聞いてみたいと思う。 

資料:橿原市教育委員会パンフレット


町並み

重要文化財今西家


道路に埋め込まれた石板。昔の町割がデザインされている。


称念寺


まだ修理されていない家屋


夢ら咲長屋の内部

  (2003.11.7/伊藤 彩子)