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京都伏見にある二つの商店街の生き方と行き方

〜伏見大手筋商店街と龍馬通り商店街〜

 最近、中心市街地活性化にかかわってそこにある商店街のあり方が問われている。今回、名古屋市西区の「特色ある区づくり」の一環で京都市伏見区(最寄り駅は京阪線伏見桃山駅、近鉄京都線桃山御陵前駅)にある二つの商店街、伏見大手筋商店街と龍馬通り商店街を視察する機会を得た。この二つの商店街は隣接しているが、規模の違いもあり、商店街活性化策は全く異なっている。

 伏見大手筋商店街は組合員数約110名の大手の振興組合である。これまでに、積極的に商店街関連の補助事業を実施してきた。からくり時計の設置、ソーラーアーケードの設置、パソコンの個店導入など、積極的に補助事業に対応している。とくにソーラーアーケードは12.5億円と大事業であり、うち5億円の自己負担について、全ての組合員を説得しきってきたパワーはすごいものがある。これは振興組合との方針と関係がある。個店は自身の本業(専門)の展開を考えればいいが、振興組合は商店街の基盤(インフラ)について個々人の本業以外でも、すなわち、説明者の言葉でいうなら、「誰かのストライクゾーンなら全て打つ」姿勢が大切という考え方である。これがこの商店街の積極性である。その結果、個店の努力もあって、売上げが伸びる好循環を形成してきている。

 もう一つの龍馬通り商店街は組合員24名の小さな振興組合である。おのずとできることには限界がある。とするなら他と差別化できることをやろうと言うことになる。たまたま、近傍に寺田屋があることから、「龍馬」をテーマに「幕末回廊構想」にむけたファサード整備(事業費4.5千万円)を行ってきた。近くにある映画村の太秦の助力を得ながら、振興組合が個店の外壁を借りて「焼き杉板と白壁」をベースにした京の町屋風のファサードを形成する事業である。これは全員が対象でなく、やりたい個店のみを対象として(13組合員/24組合員)実施している。「龍馬」をテーマにしているだけに、高知の商店街とも友好提携を行い、高知県の協力を得ながら、鳴子踊りの有名なダンシングチームの派遣や鰹たたきの実演へむけた素材提供と人材派遣を受けた。そのほか、同志社大学の人力車の会、府立商業高校のブラスバンド、龍谷大学のサテライト研究室云々、あらゆる手だてを通じて、イベント興しを展開している。その結果、マスコミにもたびたび登場し、「日本の元気ある百商店街」一つに選定された。

 商店街それぞれの特性を活かした事業展開を実施している。商店街の基盤整備(ハード&ソフト)を実施する点では両者共通しているが、前者は大規模成長型商店街、後者は零細成熟型(あるいは衰退型)商店街の事例としてみなすことができるであろうか。一般的に疲弊している商店街が多いことを考えるなら、後者の事例は参考になるかもしれない。


(2001.3.26/井沢知旦)