特集 名古屋の都心考

名古屋 オープンカフェの試み 第二弾

井澤知旦

 名古屋の都心部では40%(*1)を越える公共空間を有している。そのほとんどは道路空間である。この豊かな公共空間を、市民生活の豊かさにつなげていくことは、名古屋都心を考える上で、欠くことができないテーマである。特に「にぎわいの魅力あふれる名古屋」づくりは大きな課題になっている。

公共空間の管理とオープンカフェ

 明治以降の日本の都市づくりは道路を始め、河川、公園等の都市基盤整備)に重点がおかれてきた。そこでは整備水準の急速なキャッチアップを図り、効率性・安全性を追求するため、公共によって一元的集中的に供給され、管理されてきた。それによりもたらされた公共空間整備の体質は「官の全支配観念と全責任観念」と「民の依存」であったと言われている。例えば、歩道。それは単に目的地へ歩くためだけの交通空間だけではないはずだ。そこは市民が憩い、語り合え、メッセージを発することができる空間でもある。歩道にあるオープンカフェは、それを支援する。欧米では、オープンカフェは町中のありふれた風景となっている。それは、にぎわいの都市景観を創出し、同時に都心に多い高層ビルの足下でヒューマンな空間をしつらえ、さらに一日の時間帯や四季の移ろいとともに風景を変化させるなど、柔らかい都市景観を創出する都市装置である。

二〇〇一年度のオープンカフェ

 これまでに、すでに平成9年(1997年)に、世界都市景観会議の関連イベントとして、久屋大通沿いの民地を活用した3日間のオープンカフェの実験を行った。そして、昨年(2000年)は歩道上でオープンカフェの実験を初めて実施した。ここでいう「オープンカフェ」とは、道路管理者である名古屋市が設置した、「道路の付属物」である「歩行者休憩施設」である(これを名古屋方式と呼ぼう)。よって不特定の人々がいつでも座ることができ、特定の店舗のものではない。そして本年度も同様な仕組みで「オープンカフェ」の実験をおこなった。今回は、
1)開催期日を3日間から5日間に拡大した、
2)歩道(6ヶ所、前回4ヶ所)に加え公開空地(2ヶ所)も対象とした、
3)椅子・パラソル、テーブルの質を高めた、
4)オープンカフェ協力事業者と市が施設の設置、維持管理に関する「覚書」を締結する
など、実験の充実を図った。

市民の利用状況と反響

 利用者はどの年齢層も利用しているが、特に20歳代・30歳代の利用が多く、2人利用(43%)、家族利用(45%)が多かった。利用の目的は休憩(75%)であり、滞在時間は15分以内が48%、30分以内だと90%と、短時間の休憩が利用目的となっている。飲食は過半がとっており、「気持ちよかった」(71%)との評価を得た。このような「オープンカフェ」は「あると便利」(65%)、「もっと増やして欲しい」(30%)と肯定的評価が95%にも達する。
 お年寄りの休憩利用や乳幼児を抱える家族にとって、屋内の喫茶店やレストランよりもオープンカフェのほうが、気軽に利用できるようである。

オープンカフェの展望

 公共空間を活用したオープンカフェの取り組みは全国に広がっている。広島、大阪、横浜、千葉、仙台………。
 現行の関係法令によると欧米であるような個店が設置する歩道上でのオープンカフェを実現することは困難である。確かに公共空間が無法地帯になることや交通が妨害されるようなことは避けなければならない。そこで、「地域管理体制」をきっちりと整えたうえで、新しいルールのもとで公共空間利用を促進すべき時期に来ているのではないだろうか。前回、今回のアンケート結果からもオープンカフェに対する市民の要望は強いと思われるからだ。事業者にとっても、イベントでなく、常設となれば事業性も明確になろう。
 オープンカフェは、今や全国的に関心の高いテーマである。関連法令を改正することは、名古屋だけではどうにもならず、全国の自治体・市民が連携して国に要望していくことになろう。

*1 戦災復興土地区画整理事業の中第一工区、中第二工区。白川工区の都心3工区では、公共用地比率が44.4%であった。

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