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スペーシア・メールマガジン(隔週発行予定)   □[第467号]2018/6/20□  □配信数 730□


スペーシア・メールマガジンの第467号をお送りします。
名古屋からの情報発信とともにまちづくりのネットワーク形成をめざしています。
今回、はじめて送信させていただいた方もよろしくお願いいたします。

<内容・目次>
 ◆住まい・まちづくりコラム◆
 ・京町家の再生、保存の取組み
 ◆図書紹介◆
 ・外来種は本当に悪者か? 新しい野生 THE NEW WILD
 ◆読者の声◆
 ◆スペーシアのこの頃◆

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◆住まい・まちづくりコラム◆
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○京町家の再生、保存の取組み○

 先日、業務の都合で京都を訪れ、同行させてもらった企業が取得し、改修、保存活用
している京町家の見学の機会を得た。
 建物は、築150 年の北棟と築110 年の南棟からなり、呉服屋として使用され、北棟の
一部で昭和後期に改装がされたが、取得した企業が文献等から明治・大正期の造作を
残しつつ、できる限りそれ以前の姿へ復元し再現した。今後、宿泊事業も可能にする
ために、京都市歴史的建造物の保存及び活用に関する条例(建築基準法の適用除外を
行うもの)を活用して必要な設備改修もしている。建物は、職住一体型の典型的な京町家の
佇まいを伝える建築物として2005(H17)年に京都市指定有形文化財(建造物)の指定を
受けている。
 主屋南棟は、通りからミセ、ゲンカン、ダイドコロ、オクの四室が連なり、それに平行
するように土間(トオリニワ)が通っている。ミセは、普段は、企業のスタッフの事務執務室で
管理人のような存在。ゲンカンには、反物の色合いを自然光でみられるよう天井の一部に
明り取りの窓が備わる。建材、建具も当時のままで、現在では入手困難な高価な材料が
使われ、建具の硝子は大正硝子で味わい深い旧い京町家の雰囲気を醸し出している。
オクの部屋は、通りからも離れ静寂に包まれ、そこから見える庭園の緑や磨り硝子や
障子からの自然光に包まれた空間に癒された。建具は6月から9月は蔵で保管されている
夏の建具と入れ換えて使い、スタッフや興味のある大学生などがその作業を行うという。
 古民家などの歴史的建築物を個人が生活しながら保存するには細かな規制や経済的な
負担が大きく難しいとされる中で、事業として取り組んでいるこの企業の地域社会への
貢献は大きい。さらに、企業が取得した際に掛軸や屏風など蔵の所蔵品一式を地元大学に
前所有者から寄贈されており、協働して継承していくための産学連携の覚書を締結し、
資産に関する様々な調査・研究、活用方策について取組んでいる。
 今回は、資産の保全、管理が個人から企業へと継承された特殊なケースで、中には
開発業者の手に渡りマンションにその姿を変えてしまう京町家も少なく無かったという
(現在は条例により、京町家の解体は1年前に市へ届出て、保存継承に関する協議が
求められている)。
 歴史的建築物が文化遺産等の評価を得ると観光資源として来場者から料金を徴収し
保存費用に充てられるケースがあるが、入場料頼みの事業スキームでは景気や趣味
嗜好の多様化に左右され長期安定した資金調達に不安が残る。今回のケースが多くの
物件に当てはめられるものではないが、こうした取り組みが参考になり、全国の古民家
再生のためにも事業として収支が合わせられる企業の参画、保存にかかる規制の緩和、
使い勝手のよい助成金などの支援が充実されることに期待したい。
(村井亮治)
※現在は、祇園祭における屏風祭(7月14日〜16日)のみ一般公開を行っている。

「京都市京町家の保存及び継承に関する条例」 
http://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/cmsfiles/contents/0000228/228362/Leaflet.pdf

→ホームページに写真を掲載しています。
http://www.spacia.co.jp/Topic/column/kyomachiya/

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◆図書紹介◆ −まちづくりに参考になるものを紹介−
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○外来種は本当に悪者か? 新しい野生 THE NEW WILD/フレッド・ピアス 著、藤井留美 訳○
 草思社/2016年7月20日発行

 マスコミ等で「外来種」が話題になる度に、外来種というだけで悪者扱いされているような
違和感があった。そんな中、手にとったのが本著である。
 固有種を根絶やしにしたり、生育環境を荒らしまくったり、病気を蔓延させる外来種は
人間にとっては脅威になるかもしれない。一方で、人間によって新しい土地に導入された
ものの、あっという間に消えた外来種も存在する。また、在来種の受粉や種まきに
役立ったり、栄養源や生育環境を提供する優良外来種も存在する。例えば、環境保護
主義者が「テロリスト」と呼ぶ外来種の中にさえ、人間が悪化させた湖の水質汚染を改善
したり、線路脇など人間が攪乱した生態系では枯れてしまう在来種の代わりに空スペースを
埋めることで自然を保ったりしていて、生態系に良い影響を与えているものも存在する。
 外来種を悪者扱いする根底には変化への恐怖感や、根拠の薄い時代遅れの自然観が
あるようだ。「外来種はなんであれ排除せよ、より古くから固有と認定される在来種こそ
保全されるべき」という自然保護論は、現代生態学の領域ではすでに四方から批判され、
過去の命題となっているそうだ。
 人間が地球の気候や生態系にまで影響をおよぼす「人新世(じんしんせい)」である
現代では、人間が勝手に思い描く「手つかずの自然」や人間の存在しない原始の自然の
復元を求めるのではなく、外来種の力を借りながら新しい自然を再構築していくべきという
著者の考えに多いに共感した。ぜひ多くの人にお読みいただきたい。
(山崎 崇)

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◆読者の声◆ −みなさんからいただいた感想や意見を紹介−
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(みなさんからのご意見・ご感想をお待ちします)

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◆スペーシアのこの頃◆ −所内の話題をちょっと紹介−
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