現在の位置:TOPスペーシアメールマガジン>268号

WWW を検索 スペーシアサイト を検索

 

スペーシア・メールマガジン(隔週発行予定) □[第268号]2010/10/12□ □配信数 765□


スペーシア・メールマガジンの第268号をお送りします。
名古屋からの情報発信とともにまちづくりのネットワーク形成をめざしています。
今回、はじめて送信させていただいた方もよろしくお願いいたします。

<内容・目次>
  ◆まちのトピック◆
  ・産業防災連続セミナー「地域減災・企業減災の現在」
  ◆視察レポート◆
  ・醤油のふるさと紀州・湯浅町
  ◆図書紹介◆
  ・景気・雇用・再生を考える3冊の本
  ◆スペーシアのこの頃◆

☆**********************************************************************
◆まちのトピック◆−スペーシアに関わりのある出来事や皆さんからの情報を紹介−
***********************************************************************☆
○産業防災連続セミナー「地域減災・企業減災の現在」○

 名古屋工業大学産業防災研究会では、文部科学省運営費交付金(地域連携融合事業)
「減災まちづくり」プロジェクトの活動の一環として、巨大地震が想定される東海地域の
企業・自治体等各種団体の方々を対象として、4回にわたる連続セミナーを企画して
おります。テーマは、地震による経済被害を事前に軽減する「減災」技術を中核とする
もので、名古屋工業大学産業防災研究会の研究成果も併せて披露するものです。
関心のある方々のご参加をお待ちしております。

場所
ウインクあいち 中会議室1202(定員108名)
名古屋市中村区名駅4丁目4-38 (名古屋駅近くミッドランドスクェア東隣)

日時
第一回 2010年10月19日(火) 午後3時〜5時
       東海地震に立ち向かう地域減災・企業減災
第二回 2010年11月2日(火) 午後3時〜5時
       中小企業と企業コミュニティの事業継続
第三回 2010年11月16日(火) 午後3時〜5時
       事業継続マネジメント(BCM)最前線
第四回 2010年11月30日(火) 午後3時〜5時
       地域ぐるみの減災まちづくりに向けて
         
入場料:無料
主催:名古屋工業大学産業防災研究会 共催:名古屋商工会議所
後援:愛知県 名古屋市 名古屋駅地区街づくり協議会

問合せ先:名古屋工業大学産業防災研究会 おもひ領域 兼田研究室 水野
TEL・FAX/Email: 052-735-5511/mizuno.yayoi@nitech.ac.jp

→名古屋工業大学産業防災研究会のページ
http://www.bosai.nitech.ac.jp/

〜スペーシア・櫻井〜

☆**********************************************************************
◆視察レポート◆ −まちづくりに参考になるものを紹介−
**********************************************************************☆
○醤油のふるさと紀州・湯浅町○

 秋の連休を利用して和歌山県を訪れた。その道中で昔ながらの製法で作られた醤油
蔵が、熊野古道が通る湯浅町というところにあることを知って訪れた。訪れるまでは、
湯浅町が伝統的建造物群保存地区に指定(平成18年)されていたことも全く知らず
リサーチ不足であったが、江戸期や大正期の町家が存在し、時代の移り変わりを今に
伝える町であったので紹介したい。
  地区内は東西約400m、南北約280m、面積約6.3haの範囲で、町家や土蔵が並ぶ
ほか洋風建物も存在する。主屋は切妻造平入で、1階は格子戸、2階は虫籠窓が
開けられている。伝統的な町家や土蔵は白壁が多い印象だが、大正期の建物になると
総2階、黒壁で造られたものがある。また、醤油蔵が集まる北町には「大仙堀」が残り、
かつてここから醤油樽を船積みして海路で出荷したそうである。
  湯浅町は町を形成した背景となる文化にも特徴がある。この地で醤油の作り方が
中国より伝わったのが13世紀の初めと言われ、安土桃山時代になってこの地から
醤油が商品として出荷され、江戸時代に紀州藩の保護を受けて全国に販路を広げた。
この地の醤油醸造の製造技術が千葉県銚子や香川県小豆島などに伝わったと言われて
いる。なお、江戸時代の商人である紀伊国屋文左衛門がこの地の出身である。
  伝建地区への登録は平成18年と比較的新しいが、後から調べると、2005年度関西
まちづくり賞(主催:社団法人都市計画学会関西支部)や2006年度全国都市再生モデル
調査の選定などの実績もあり、商工会や商店街、湯浅町まちづくり委員会(町役場が
住民公募をして組織)、熊野古道研究会などの住民団体などの動きが活発なようである。
醤油蔵のある通りでは、訪れた人が腰掛けられる椅子などが設置されたり、蒸籠(せいろ)
箱を活用して家財道具を軒先に陳列した「せいろミュージアム」など、住民の手作りによる
まちづくりの取り組みもそこかしこに垣間見える。関西南部にお出かけの際には、ぜひ
訪れていただきたい町である。
(浅野健)

→ホームページに写真を掲載しています。
http://www.spacia.co.jp/Mati/sisatu/2010/yuasa/index.html

→関連ページ
和歌山県湯浅町 紀州湯浅の町並みのページ 
http://www.town.yuasa.wakayama.jp/history4.html

湯浅町観光協会のページ
http://www.yuasa-kankokyokai.com/

(社)日本都市計画学会関西支部 関西まちづくり賞のページ
http://www.cpij-kansai.jp/cmt_machisyo/top/machiawardtop.html

☆**********************************************************************
◆図書紹介◆ −まちづくりに参考になるものを紹介−
**********************************************************************☆
○景気・雇用・再生を考える3冊の本○

 最近刺激的な書籍が出版されました。いずれも世の中に流布された「思い込みの常識」を
覆すものです。

《景気:デフレの正体/藻谷浩介》
  ひとつは藻谷浩介氏の「デフレの正体」(角川oneテーマ21 ¥760)です。かれは全国を
歩き回り地方の実態をつぶさに観察しながら、同時に全数調査の公表統計データを基本に
据えて、経済動向等を分析し、提言するのに定評があります。好況だと言われながらも
売り上げは落ちる、不況だと言われればなおさら落ちるという現状は、景気循環で決め
つけられない何かがそこありそうです。現役世代が減少し、国民が稼ぐ給料総額は大きく
落ち込み、ストック豊かな高齢者が増えるとモノやサービスは売れなくなり、デフレが進む、
その要因は「人口の波」であると。国際競争力が強まって貿易黒字でも、輸出企業やその
株主である高齢富裕層の懐に落ちて、庶民にはほとんど影響がないという実態を指摘
しています。日本経済にとっては「個人所費が生産年齢人口減少によって下ぶれしてしまい、
企業業績が悪化してさらに勤労者の所得が減って個人消費が減るという悪循環」を断ち切る
ことが重要であり、そのための処方箋、@高齢富裕層から若者への所得移転、A女性の
就労と経営参加、B外国人観光客等の受け入れが示されています。

《雇用:「若者はかわいそう」論のウソ/海老原嗣生》
  ふたつ目は海老原嗣生氏の「『若者はかわいそう』論のウソ」(扶桑社新書 ¥798)です。
かれは人材マネジメント(雇用)の専門家です。副題に「データで暴く『雇用不安』の正体」と
あるように、感覚的でなく根拠データを示して論駁しています。この本ではいくつもの「ウソ」を
暴いているのですが、例えば、「熟年層によるポストの独占」→「非正規社員の増加」→
「貧困化(貧困率の増加)」→「若者かわいそう」という流布された論調も、国民生活基礎調査
では低所得者(ここでは年収150万円未満とする)のうち51%が高齢者で、失業中、正社員、
自営業と続き、最小の非正規はわすか6%に過ぎず、貧困率の増加は高齢貧困世帯の
増加にあることを明らかにしています。「若者かわいそう」を決定的にしたのはOECD
レポートなのですが、マスコミもそれを精査・検証することなく、流れを作っているのです。
テレビで放映された「ネットカフェ難民」も、データを示しながら、いつの時代にでもある悲惨な
話をネットカフェという現代用語でパッチワーク的に取り上げて、『若者かわいそう』に矮小化
していることを明らかにしています。

《再生:地域再生の罠/久繁哲之介》
  最後のひとつは久繁哲之介氏の「地域再生の罠」(ちくま新書 ¥819)です。地域再生
プランナーを職業としています。かれは@専門家が推奨する成功事例はほとんど成功
していない、Aまれに本当の成功事例あっても異国や昔であり、模倣は困難としたうえで、
成功事例と言われる6都市(宇都宮、松江、長野、福島、岐阜、富山)を取り上げて、実は
衰退しており、模倣は一層衰退に拍車をかけることを説いています。コンパクトシティの
先進都市富山も岐阜も決して活性化していないと指摘し、岐阜については150億円かけて
超高層ビルを建て駅前に機能集約するコンパクトシティを目指しながら市民の足である
路面電車(55年分の赤字補てん額=150億円)を廃止するのは矛盾しているとして批判
しています。とりわけ「土建工学者」がやり玉に挙がっており、成功していない成功事例の
模倣を推奨し、自らの理想とする都市政策や器を先につくって、市民にそれに合わせる
ことを強要するというものです。反撥と納得が相半ば(いや2:1)というところでしょうか。
ただ、彼自身も批判するだけでなく、7つのビジョンと3つの提言を行っています。

以上3つの書籍を紹介しましたが、いずれもマスコミや「専門家」の言動を無批判に受け
入れることはミスリードを許すだけであり、自ら判断するデータと現場を見る目を持たなければ、
今日的課題は乗り切れないぞというメッセージを発している3冊です。今を乗り越える必読書
です。そして「土建工学者」の皆さん、反論すべきは反論しましょう。
(井澤知旦)

→ホームページに上記コメントと各書籍へのリンクを掲載しています。
http://www.spacia.co.jp/Mati/tosyo/keikikoyo3satsu.html

☆**********************************************************************
◆読者の声◆ −みなさんからいただいた感想や意見を紹介−
**********************************************************************☆
(みなさんからのご意見・ご感想をお待ちします)

☆**********************************************************************
◆スペーシアのこの頃◆ −所内の話題をちょっと紹介−
**********************************************************************☆
・暑かった夏がようやく終わり、10月に入って幾分か過ごしやすくなりました。
  名古屋都心では名チャリのステーション、あいちトリエンナーレの案内をして
  いる方をそこかしこで見かけます。ぜひ期間中に一度は体験しなければと思って
  います。(T.Asano)

#######################################################################
◎ホームページでは一方的な情報提供に終わってしまいますが、このメールマガジン
  を活用し、様々な意見交換等を行うことによって、より深いネットワークが形成できれ
  ばと考えています。 様々なご意見や情報もお寄せ下さい。このメールマガジンに掲
  載させていただきます。(このメールへの返信でお願いします)
◎バックナンバーはホームページに公開しています。
   http://www.spacia.co.jp/mm/
◎今後の配信を希望されない場合は、このまま返信して下さい。
-----------------------------------------------------------------------
(株)都市研究所スペーシア 編集:浅野 健
  〒460-0008 名古屋市中区栄5-1-32 久屋ワイエスビル8階
   TEL 052-242-3262 FAX 052-242-3261
   URL http://www.spacia.co.jp/
#######################################################################